せんくらの興奮も冷めやらぬうちにあのトリオのコンサート。これだけ近いとちょっともったいない気がしないでもない。あのトリオとはもちろん、川久保賜紀(vn)、遠藤真理(vc)、三浦友理枝(pf)のことである。
場所はフィリア・ホール。思えばいちばん最初に友理枝嬢のリサイタルを聴いたのもこのホールだった。
せんくらではブラームスとドヴォルザークだったが、今回はガラッと趣向を変えてオール・ラヴェル・プログラム。
01.亡き王女のためのパヴァーヌ(ピアノ三重奏版)
02.ボロディン風に(ピアノ独奏)
03.シャブリエ風に(ピアノ独奏)
04.水の戯れ(ピアノ独奏)
05.ヴァイオリンとチェロのためのソナタ
<休憩>
06.マ・メール・ロワ(ピアノ三重奏版)
07.ピアノ三重奏曲
<アンコール>
08.リゴードン(『クープランの墓』より)
この中ではヴァイオリンとチェロのためのソナタがレアである。傑作とされながらも演奏の機会は極めて少ない。この曲はCDで聴くよりも、ライヴを観る方が圧倒的に楽しい。ヴァイオリンとチェロの掛け合いが如実にわかるからだ。
相当な難曲と思うが、そうと感じさせない二人はさすがだ。せんくらのときも感じたのだが、賜紀嬢のヴァイオリンが艶やかでとてもいい。真理嬢もアグレッシヴな演奏でスケール感が出ていた。
『水の戯れ』はおそらく友理枝嬢が最も得意とする曲。巧く弾く人はいくらでもいるが、実際に水がきらめくような様を想像させてくれる演奏はそう多くない。磨き抜かれた美音でないと魅力が半減するのはもちろんのこと、右手と左手のバランスも難しい。彼女の『水の戯れ』は絶品である。たぶん彼女の実演でいちばん多く聴いた曲だと思う。
さて、メインのピアノ三重奏曲。
彼女たちの演奏は若々しく瑞々しいのが魅力だ。徹底的に美しい音色で弾ききったラヴェルという印象だ。曲の掘り下げや解釈が甘いという向きもあるかと思う。確かに古今の名演と比べてしまうと、若さを感じてしまうのは否めない。しかし、それはそれでいいのではないか。若さは欠点ではなく可能性だ。熟成された演奏もいい。しかし、彼女たち演奏の青リンゴを齧ったような爽やかな甘酸っぱさもほかにはない魅力がある。若いときにしかできない演奏というのも確かにあるのだ。そして、たとえば10年後に演奏したときにどう熟成しているか、そんなことを楽しみにしていたいとも思う。
そもそも彼女たちが「ピアノ三重奏」というさほど人気があるとは言えないジャンルの音楽に果敢に取り組んでいること自体に価値があると思う。
ところで、このところピアノ三重奏曲のスコアを眺めていたのだが、この譜面は綺麗だ。譜面自体がアートのようなのだ。図形のようだと言ってもいいかもしれない。意図したことなのかどうかはわからないが、ラヴェルのすごさを垣間見たような気になった。
というわけで、今日はスコアにサインをいただいた。
彼女たちを聴くのは今年はこれが最後になりそうだ。
今年もたくさんのワクワクをありがとう。
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