昨日の記事の末尾でふれた渡辺あやの俳句、一句だけではあんまりなのでもう少し紹介したい。
胸ぬちにうた醸しゐる冬日かな
寒月や詩の凝集といふ課題
冠雪の富士あり思惟は透明に
母の背の温くさ梟の怖さかな
何すなく逢うて別れぬ花の宵
名を知らで愛でゐし花ぞ花みづき
まざまざと海堡の崩えや秋の風
水引草つゞれの帯に織らまほし
月に待す浜の芥も何もかも
風花と書きはかなさと読むべきか
冬深し解いてはたゝむ胸の襞
糾すべき一事暖炉のもえゐたり
臘八や暁暗に継ぐ生命の炎
枯野路の果の果なる母郷かな
山眠るやブッセの詩をふところに
(渡辺あや『水引草』より)
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