夢というのは不思議なもので、現実にはありそうもないことを平気で見ることができる。覚えている夢なんて僅かなものだろうから、もし見た夢を全て覚えていることができるなら、さぞかし楽しいだろうと思う。
死んだ子の夢ばかり見るのだ。
その子が亡くなってからもうずいぶん経つ。
亡くなったときまだ小学二年生だった。
彼女は小さな友だちだった。
彼女は私のことを「オジサマ」と呼んだ。普通なら絶対に許さないだろうに、彼女の鈴を転がしたような声でそう呼ばれるのは嫌いではなかった。
先日は何かに逆さまにぶら下がって登場した。
木の枝にでも脚を引っ掛けていたのだろうか。
「何をしているんだ?」と訊くと「こうもり!」と答えた。
「こうもりはね、かわいい顔してるんだよ。血を吸うこうもりは少ないんだから」などといかにも動物好きらしいことを言っていた。
飲み会のあとでは「お酒くさ〜い」と顔をしかめていた。
怒った顔がまた可愛いのだ。
夢の中の彼女はいつも明るい。
死後の世界とか幽霊とか、そういうものがあるのかどうかは知らない。
けれども彼女が夢に降りて来るという考え方はなかなか楽しい。
たまにふと部屋を何かが横切ったように視界を掠めることがある。
気のせいだとしてしまうのは簡単だが、彼女が遊びに来ているのだろうと思うとなんだか楽しい。
そして本当にそうかもしれないのだ。
かつて人々が説明のできないことを妖怪のせいにしたように、ちょっとした物音や気配を彼女のせいにしている。
それってなんだかとても豊かなことのように思えるのだ。
ログインしてコメントを確認・投稿する