今の新しいロックを聴かなくなってずいぶん経つ。
もちろんロックは今でも聴いているが、だいたい70年代のものが多い。新しいものを聴いたとしてもせいぜいご贔屓のバンドの新作くらいだ。
メタルに限らず、ロックも閉塞している。
ほとんど方法論が出尽くしてしまった感がある。
なのであまり興味を惹かれない。だったら昔のものを聴いていた方がよい。
BABYMETALはそんな世界に楔を打った。
こういうものを求めていたとも言えるし、それが日本から出てきたということが痛快だ。
まあ、彼女たちのことはいいとして、本題に戻る。
ロックもまだまだ捨てたものじゃない、そう思わせてくれるアルバムが出た。
若い世代ではないところが悩ましいが、ベテランだって紛れもないロック・アルバムを作れるということだ。
レッド・ホット・チリ・ペッパーズ(Red Hot Chili Peppers、略してレッチリ)の11枚目のアルバム『The Getaway』。
レッチリが素晴らしいのは知っているが、これは予想を遥かに上回る快作だ。
かつてのようなハードさはないけれど、やはりファンキーでグルーヴィー。そんなサウンドにちょっと切なくなるようなメロディーが乗る。
フリーの暴れまくるベースやチャド・スミスのド迫力のドラムを期待すると肩透かしを食らう。しかし彼らは技巧的で印象的なフレーズをたくさん繰り出しているし、このリズム・セクションがサウンドの核であることに変わりはない。
前任者と比べられて気の毒なジョシュ・クリングホッファーもカラフルなギターを聴かせている。
アンソニー・キーディスのヴォーカルは最早円熟の域に達していると言ってもいい。
今まで以上に歌を聴かせるアルバムである。
一聴するとメロウな感じなのだが、AORっぽさを全く感じないのはその芯の通ったサウンド作りにあるのだろう。よく聴けばとんがっているところがたくさんある。ハードなだけがロックではないということだ。
誤解を招くような言い方になるかもしれないが、大人のロックだな、という印象だ。
それでいてインテリジェンスなバカというキャラも健在。
妙な言い方になるし、的を射ているとも思えないのだが、そのサウンドの向こうにジェネシスやジェントル・ジャイアントが見えるような気がするのだ。
世間ではギタリストのジョン・フルシアンテの不在を嘆く声が多いようだが、私はジョシュはジョシュでフルシアンテとは異なるスタイルで良いと思っている。音色のバリエーションが豊富でレッチリのサウンドに上手く融合している。前任者と比べること自体がナンセンスなのだ。
チャド・スミスのドラミングが好きなんだよね。
パワーで押すタイプかと思いきや、手数も多く繊細で技巧的な面もある。
フリーとのコンビは現役バンド最強のリズム・セクションとも言えよう。
まあ、何周しても飽きないロック・アルバムなんて本当に久しぶり。
ジャケットも素敵だ。コラージュ写真かと思ったが、どうやら絵のようだ。
久々に過去アルバムも聴いてみたが、やはりレッチリは最高だ。
チャド・スミス加入後のアルバムはどれも傑作と言えるが、中でも前々作『Stadium Arcadium』が素晴らしい。ジャケットは素っ気ないが、内容は2枚組の大作。最近は2枚組と言っても90分程度で、1〜2曲削れば1枚に収まるし、曲数が多いぶん内容が薄まる、という看板に偽りありのようなものが多いのだが、これは28曲で120分超え、しかも捨て曲なしの文字通りの大作。硬軟織り交ぜながら一気に聴かせてしまう勢いがある。それでいて何度聴いても飽きさせない奥の深さも備えている。
このアルバムを最後に脱退したジョン・フルシアンテのギターも最高だ。
もちろん、どのアルバムも傑作なんだけどね。
とにかく今回のアルバムは「最近は縦ノリの激しい音楽はしんどくてね」というオールド・ファンに是非聴いてみてもらいたいと思う。自然と乗せられてしまうグルーヴ感と、刺激的なサウンド作りに、ロックはまだ死んでいないことを知り胸が熱くなることだろう。
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