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2015年02月19日22:41

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アモン・デュール��

先日エロイなるバンドについて書いたのだが、ドイツつながりでこういうのはどうだろう。
今回は超メジャーである。
といってもヨーロッパではということだが…。日本では認知度は高くない。それでもタンジェリン・ドリーム、カン、クラフトワークの次くらいには有名なのではないだろうか。

アモン・デュール(Amon Duul、uにはウムラウトが付く)。

サイケデリック系のクラウト・ロックとしては大物中の大物。
狂気を感じさせるバンドはいくつもあるが、狂気そのものというバンドはそう多くはない。プログレとして紹介されることが多いが、そんなもんプログレでもなんでもない。耳で聴くドラッグ、としか言いようがないのではないかという気がする。

もともと楽器経験のない者が集まりコミューンのようなものとして生まれた。
それがすぐに二派に分裂する。そしてより音楽的な方向を目指したのがヨーロピアン・サイケデリックの最先端を駆けたアモン・デュール��(以下略してAD2)である。�兇歪名錺札�ンドと呼ばれる。一方本家の方は音楽的に破綻し間もなく解散。そりゃそうだ、楽器を弾ける連中がいなくなっちゃったんだもん。

メンバーは出入りが激しいので、主だったメンバーだけざっと記しておく(だいたい古い順)。
ジョン・ヴァインツィール:ギター
クリス・カーラー:ギター、ヴァイオリン、サックス
ペーター・レオポルト:ドラムス
レナーテ・クナウプ:ヴォーカル
フォルク・U・ログナー:キーボード
デイヴ・アンダーソン:ベース
ローター・マイト:ベース、ヴォーカル
カール=ハインツ・ハウスマン:キーボード
ダニエル・フィヒェルシャー:ドラムス
ロビー・ハイプル:ベース
ステファン・ツァウナー:キーボード
クラウス・エバート:ベース
ジュリー・ウォリング:ヴォーカル
ガイ・エヴァンス:ドラムス
他…

『Psychedelic Underground』(1969年)
分裂前のアモン・デュールのデビュー・アルバム。
未だに名盤として崇められているのだが、普通に音楽として鑑賞することは困難と思われるアルバムである。無秩序にかき鳴らされるギター、激しく連打される打楽器、意味不明な叫び、そこにあるのは音の塊のみ。かろうじて音楽としての領域に引き止めているのは堅実なリズム隊であろう。土俗的で原始的な音響。悪夢のコラージュ。ただし、ジャケットは美しい。
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『Phallus Dei(神の轍)』(1969年)
AD2の歴史はここから始まる。素敵な邦題が付いているが、直訳すると男根崇拝。
オリエンタル的な雰囲気が濃厚だが、分裂前からすると音楽としてはずいぶん整理されている。それゆえにむしろこちらの方がヤバイ感じがする。紅一点レナーテ・クナウプのヴォーカルというかヴォイスは巫女の託宣のようだ。音響による神羅万象とも言える20分を超すタイトル曲は傑作。
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『Yeti(地獄!)』(1970年)
当時はLP2枚組。前半はAD2流ハード・ロック。へヴィという点では後のへヴィメタルより勝る。レナーテのクリアーな声と粘着質の男声というコントラストが明瞭になっている。無国籍ロックとも言えよう。
後半は長尺のインプロヴィゼイションつまり即興が3曲。サイケデリックな雰囲気が濃厚。違う意味でへヴィだ。これを最高傑作と見る人も多い。
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『Tanz der Lemminge(野ネズミの踊り)』(1971年)
組曲形式の大作がいくつも収められた2枚組。意外にアコースティックな質感が目立つ。サイケデリックなトリップ感覚はここに極まったと言えるかもしれない。このジャケットも素敵だ。
デイヴ・アンダーソンがイギリスに帰りホークウィンドに加入したため、プロのベーシストであるローター・マイトが加わる。レナーテはゲスト扱いで、歌っているのが1曲のみというのが残念。
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『Carnival In Babylon(バビロンの祭り)』(1972年)
作風を大きく転換し歌もの重視という方向性が示される。ここからAD2は軟化したと言われるのだが、いかがわしい雰囲気なのは変わらず、歌ものロックとしての体裁は整っているものの、まだまだ尋常な音楽ではない。レナーテのヴォーカルを聴くならこれが決定盤。私なら邦題はそのままバビロンの謝肉祭と付ける。個人的には最高傑作としたい。
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『Wolf City(狼の街)』(1972年)
これも傑作として世評の高いアルバム。確かにサイケデリック&ミクスチャーの頂点を極めたものと言える。さながら狂気の万華鏡。ジャーマン・ロックの代表曲『Deutsch Nepal』を含むが、レナーテがリード・ヴォーカルを取る冒頭2曲が白眉と思う。
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『Vive La Trance(恍惚万歳!)』(1974年)
前作に比べるとリラックスした雰囲気。ベースがロビー・ハイプルに替わり、スッキリしたということもあるのだろう。全体的に明るい曲調の曲が多く、物足りなさも感じるが、歌ものとしてのグレードは上がっている。AD2のファンはギリギリここまでという人が多い。
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『Hijack』(1975年)
それまでのアート風のジャケットからふざけたようなチープさに不安を感じた人も多かったことだろう。ローター・マイトが戻り、変態ベースとねちっこい声が復活している。AD2完全堕落の一枚として世評の低いアルバムだが、内容としては前作からそう変わってはいない。これでも十分イッちゃった世界なのだが…。ポップになりすぎたと言われるが、どこがポップなのか?
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『Made In Germany』(1975年)
久々の2枚組だが、すぐに1枚ものに編集されてしまい、オリジナルはプレミアが付いていた。現在のCDはオリジナル版で復活。2枚組ということでやりたい放題。表面的にはストレートなロックだが、ちょっと踏み込むと底なし沼が口を開けている。さすがに演奏は安定している。ベースがマイトからハイプルに再び交代している。ドイツの歴史上の人物に扮したメンバーのジャケットも楽しい。なお、これを最後にレナーテが脱退。AD2のひとつの歴史が終わった。
初めから2枚組LPを持っていたこともあってかなり気に入っているアルバム。
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『Pyragony X』(1976年)
ヴァインツィール、カーラー、レオポルトの古参メンバーを中心に再編。単にオリエンタル色の強いロックになってしまったように思う。いわゆるプログレ・ハードになったような印象だ。時代の流れには逆らえなかったということかもしれない。新生AD2ということであれば、内容は決して悪くはない。『Flower Of The Orient』はいい曲だと思う。しかし、レナーテの抜けた穴は大きい…。
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『Almost Alive』(1977年)
実は私はこの時代も嫌いではない。ヤバイ連中が普通のロックをする、というのも味があっていいと思うのだ。実際には普通ではない。以前の彼らは狂気と変態の領域に踏み込んでいたゆえに普通に聴こえるだけなのだ。意外に悪くないと思う。ところどころ女性ヴォーカルが入るのだが、クレジットされていないので誰だかわからない。
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『Only Human』(1978年)
さらに普通化した。ヴァインツィールが抜けてギターが薄くなったのが響いている。AD2のアルバムでは聴く頻度がいちばん低い。このひねくれシンフォニック・ハード路線もここで終了を予想させる。どこか諦めにも似たやるせなさが漂う。
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『Vortex』(1981年)
おそらく前作でAD2は幕を閉じたのだと思う。ところがレナーテが復帰した奇跡の1枚が作られた。ほぼ全曲でレナーテのヴォーカルがフィーチャーされている。曲想は前作までの路線と変わらず、もはや狂気を感じさせるものではないが、レナーテが歌うことでなんと魅力的に聴こえることか。AD2からの最後のプレゼントだと思っていた。
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『Hawk Meets Penguin』(1983年)
ところがAD2はイギリスで復活する。ヴァインツィールが初期ベーシストのアンダーソンと組み、ジュリー・ウォリングという女性ヴォーカルを迎え、なんとドラムにはヴァン・ダー・グラーフ・ジェネレイターのガイ・エヴァンスがっ! ガイがAD2に参加というだけでひっくり返りそうになった。
最初はウォリングのスキャットをフィーチャーした12分程度の曲。メロディアスで聴きやすい。A面残りとB面全てを使った長尺曲は往年のAD2を思わせる音響のコラージュの洪水。もう誰が何を演奏しているのかわからない。へヴィすぎる内容にただただ驚嘆…。ジャケットの可愛らしさとのギャップが…。
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『Meetings With Men Machines』(1984年)
前作と同じメンバーで作られたが、ガラッと作風が変わり、歌ものロックになっている。前作の濃さを期待していたので完全に肩透かしを食らった感じだが、どう体裁を整えてもお里が知れるというか、普通のことをやっても正気の沙汰には思えないのだから、やはりAD2は凄いのかもしれない。ウォリングの天真爛漫な少女声もなかなか良い。ガイのドラミングはもちろん素晴らしい。彼もまた狂気を秘めたプレイヤーである。
左は現行ジャケット。右は(たぶん)LP初出時のジャケットで、当時持っていたからかこちらの方が好き。
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その後は新旧メンバーが入り乱れ、やがて『Wolf City』期のメンバーで再結成し、来日までしてしまった。
おそらく現在は解散状態なのだと思うが、神出鬼没なのでよくわからない。アルバムも追い切れていないというのが実情だ。
激しい批判にさらされつつも激動の時代をなんだかんだ生き残ったしぶといバンドである。
一般的にイメージされるプログレッシヴ・ロックという言葉からは離れたところにいるが、70年代初めの頃は確かに前衛だったのだろう。
ドイツのみならず英国を含むヨーロッパの中でも唯一無二の個性を持った集合体AD2、彼らはロックの極北を歩んでいたのだと思う。
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