新宿京王の名物イベント駅弁大会も今日が最終日。
今回は50回の記念大会だったわけだが、特に華々しい企画があるわけでもなく、普通の駅弁大会という趣だった。しかし、この普通というのが大事で、昨年が京王の思惑と客の期待とが乖離してしまった感が強かったので、元に戻った駅弁大会を大いに歓迎したい。
高級素材に贅を凝らした調理法というのは駅弁とは本質的に相性が悪い。高額となればなおさらだ。
奇しくも昨年は「駅弁とは何ぞや」ということを問いかける大会になったようで、それはそれで意味があったことなのかもしれない。
今年もそこそこ高額な駅弁はあったのだが、駅弁としての体裁を崩さずコンセプトがわかりやすかったのがよかったのだろう。お祭りだから財布の紐は緩みがちになる。それでもやはり駅弁らしいということが大事なのだ。
昨年は目玉になるはずのブースにほとんど列がないという異様な光景ばかりが印象に残っているが、今年はメインはどこも列ができるといういつもの光景に安心した。もっとも、それだけ入手しにくくなるということなのだが…。
今回は45種類、55個を食した。
メイン対決は「海の三宝」ということで、ウニ・イクラ・カニの対決となった。
岩手・久慈「うに弁当」は現地でも幻の駅弁となっているようで、初日から大人気で大行列となり、早々に整理券配布に切り替わった。夜に行ったときに運よくキャンセル待ちでゲットすることができたが、キャンセル狙いという作戦も有効なのである。
北海道・小樽「百花繚乱 いくら華吹雪」はイクラ代表なのだが、むしろカニの存在感が強かった。名駅弁「海の輝き」調整元の新作で、「海の輝き」のバリエーションといった趣。カニの白とイクラの赤、それに青じその緑という色味が綺麗で、ベストドレッサー賞があるならこの駅弁だろう。
鳥取「あったか かにしゃぶ風弁当」は加熱式という力技だが、温めることによってカニ風味が引き立ち、これは抜群に美味かった。
この対決はいずれも素材の持ち味を生かしたレベルが高いもので、順位を付けるのは野暮というものだろう。
新作肉対決も有名どころの競作。
佐賀牛、神戸牛、鹿児島黒牛&黒豚という対決。
佐賀牛は連日大行列になっていた。最も高額(\1,860)なのに一番人気だったようだ。サーロインと赤身のステーキの切り身の見栄えがよかったというのもあるだろう。
これは通常の駅弁としての金額に抑えながらいい仕事をしていた「鹿児島黒豚・黒牛贅沢肉めし重」を勝ちとしたい。
前半大きな目玉となっていたのが広島・宮島口「あなごめし」の実演初参加だろう。
例年チラシ掲載もなく、少数の輸送販売のみで、開店と同時に整理券がなくなる幻の駅弁と化していた。長年の京王の説得により今回の実現となったそうだ。
開店前の8時半から整理券を配布するという異例の対応。7時前から列ができていたようだ。
それだけ苦労する価値のある駅弁だと言えよう。駅弁大会というのはお祭りである。こういうのもむしろ楽しまなくてはと思う。
来年も来てほしいが、どうだろうか?
あとは50周年記念ということで、群馬・横川「峠の釜めし」が店内調理だったり(未食)、横浜「シウマイ弁当」が実演だったり、目新しいことも少なくなかった。「シウマイ弁当」は美味かったなあ…。侮っていた。日曜に大阪に行くときには東京駅でこれを買おう。
実演レギュラー陣も健在で今回も楽しませてもらった。
富山「ぶりかまめし」、山形・米沢「牛肉どまん中」、岐阜・高山「飛騨牛しぐれ寿司」、北海道・釧路「いわしのほっかぶり寿司」、熊本・新八代「鮎屋三代」、新潟「のどぐろとサーモンといくらの弁当」このあたりは鉄板だな。
実演初出場の青森・八戸「復幸 炙りかきとうにめし」はいい弁当だった。宮城・仙台「鮭はらこめし」の実演も嬉しい。滋賀・米原「湖北のおはなし」のまさかの実演初登場も秘かな話題。丁寧に作られた弁当は駅弁の良心とも言える。
混雑ぶりは相変わらずで、平日ですら混んでいた。
いや、混雑してこそ駅弁大会なのである。
スタッフの列のさばきは熟練していて、さすがに経験値が高いと思わせられる。あれだけの混雑でほとんど混乱させないのはさすがだ。
あれだけ人が集まればとんでもない輩もいるのだが、それはどこでも同じだろう。
手本になるべき年配の人に多いというのは悲しいことだが。
さて、盛況だった(と思われる)50回記念大会だが、やや異変を感じないでもなかった。
例年人気のレギュラーのブースにほとんど列がなかったのだ。たとえば「牛肉どまん中」や「いかめし」(未食)などは列になっていることが多かったのだが、今回は列を見なかった。対決に客が流れた影響かもしれないし、分散していたということなのかもしれない。
また酷いときには1時間程度の列になる輸送ブースも今回はたいして待たなかった。列は長いのだが、入場までの時間が短い。昨年までは40分くらいかかっていた長さで、今回は20分ほどだった。輸送ブースのレイアウトが変わり若干広くなった(?)という効果があるのかどうかわからない。昼前にはほとんど列はなくなっていた。これはなんとなくなのだが、魅力的な駅弁が少なかったのではないか、という気がしないでもない。
輸送は写真と勘に頼るしかなく、博打的な要素が濃い。それが楽しいというのもあるが、ハズレだったときの敗北感はハンパではない。
今回のアタリは青森・八戸「福を呼ぶ海鮮 萬両玉手箱」、青森「ひと口いなり海鮮天むす」、水戸「印籠弁当」、千葉「銚子市場の鮪カツ丼」くらいだったか。おもしろかったのは大阪「大阪名物いか様弁当」。
北海道「母恋めし」、茨城・大洗「ダイダラボウのはまぐりめし」、京都・園部「栗めし」は会期中一度は食べたい逸品である。
今や東京駅をはじめ、大きな駅の構内ではいろいろな種類の駅弁を買うことができる。
なのでそうしたものをわざわざ駅弁大会で買う必要もなかろうと思うのは当然のこと。実演であればともかく、同じ輸送では優先度を下げても仕方がない。実際に「東京駅で買えるからいいや」と購入を見送ったものもある。東京駅では実演ブースを設けるほどの力の入れようなのだ。
もはや駅弁は電車の中だけで食べるものではない。駅構内がショッピングセンター化している現在では、駅弁を買って家で食べるというスタイルも珍しくなくなっていることだろう。駅弁には普通の弁当にはない魅力がある。味だけではないプラス・アルファがあるのだ。
京王もこうした動向に目を向けているだろう。駅弁戦線異状ありとなるのかどうか、今後に注目していきたい。
ところで、今回は駅弁の値段が高くなったと感じた大会でもあった。
もちろん消費税が増えた影響もあるだろうが、実質値上げされているようだ。1000円でお釣りがくるものは本当に少なくなった。駅弁は決して安くないのだ。
私個人の感覚だが、駅弁として出せる金額ギリギリは1200円くらいではないだろうか。だが、それを超える金額のものも少なくない。駅弁大会という特別な場だから購入するが、これが旅行先の駅だったら買わないのではないかと思わなくもない。
駅弁大会に出品する新作は、一定期間駅弁として売ることを義務付けられている。しかし、実際に残っている駅弁がどのくらいあるのだろうか。駅弁大会のための駅弁では本末転倒である。
そんな中で昨年の肉対決の新作、郡山「ふくのしま 豚の醍醐味」がそのまま戻ってきたのは嬉しい。駅弁大会のために考案され、それが駅弁として根付く、こうした再会には感慨深いものがある。来年も会えると嬉しい。
今大会は天候にも恵まれていた。
穏やかなポカポカ陽気の日も少なくなかった。
会場内の休憩所の空きを見つけられるのはタイミングの問題。屋上で食べようという人も多い。
現在京王の屋上の遊技場は閉鎖され工事を行なっている。そのため開放されているのは半分程度。ベンチはさほど多くなく、柵に座る人もいる。ここを上手く有効活用できないものかと思う。
夏にはビアガーデンを開くのだから、テーブルやイスはあるはずなのだ。
席を設えるとなると管理する人も必要になってくるだろうが、有料でもいいのではないかと思う。いろいろクリアーしなければならない問題はあるだろうが、あれだけのスペースを殺しておくのはもったいない。寒いときは厳しいこともあるが、ポカポカ陽気の屋上食いはなかなかオツなものなのである。
というわけで、長いようで短い、短いようで長い駅弁大会も幕を閉じた。
終わってしまうと淋しいが、二週間という期間はちょうどいいのだろう。
50年続いたということは凄いことである。そして来年以降も楽しませてくれることだろう。
日本が南北にも東西にも長い国であるということを思い出させてくれるのが駅弁大会である。
ご馳走さまでした。
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