それは昨日の午後だった。
駅のホームで電車を待っていた。
だいたいみんな二列にならんでいる。私は列のいちばん前にいた。
電車が着くと、降りる人のために真ん中を開け、両脇によける。
よく見慣れた光景である。
電車は空いていた。
そのドアから降りてくる人はいなかった。
そこにどこからかすごい勢いで爺さんがやってきた。そして中央から真っ先に乗り込もうとする。マナーも守れぬしょーもない爺さんである。そこまではいい。よくはないが、決して珍しい光景ではない。
しかしその爺さんは乗り込もうとするときに杖を斜めに突き出したのだ。ちょうど私の足元である。そんなこと想定していないから、躓いて無理な体勢をとってしまったようだ。
その爺さんは私の方をチラッと見て近くの席に座った。周りの人は唖然として動きを止めていたよ。
自分が先に乗るために邪魔をしたということなのだろう。席はたっぷり空いていたのだが、後からきた爺さんには見えなかったということか。いちばん先に乗って席を確保したかったに違いない。
おかげで股関節を痛めた。
関節というより筋なのだろう。そのくらいで負傷するのも情けないが、こちらもジジイの領域に足を突っ込みかけているのだから仕方がない。転ばなかっただけ良しとすべきだ。
意外に痛む。歩くとさらに痛い。
そのときはそうでもなかったが、夕方くらいからかなり痛みだし、今朝がピークだった。午後過ぎたあたりからいくらか痛みは引いてきたようだが、それは薬のおかげかもしれない。
しかし最近は言動が目に余る年寄りも少なくない。
今どきの若い者は、と言われるが、年寄りも負けていない。むしろ分別のあるはずの年寄りの方が始末に負えない。年長者を敬うべき、と言われてもこういうのが多いのでは説得力に欠ける。
どこまで本当の話なのかはわからないが、シルバーシートで臨月近い妊婦を立たせて座った婆さんがいたそうである。
日本という国が歪みかけているのは若い人たちのせいではなく、すでにわれわれの上の世代から始まっていたことなのかもしれない。
昨日の爺さんにしたって、子どもや孫がいるかもしれない。
だとしたら、自分のそうした行ないを堂々と孫に示せるのだろうか。
いつどこで誰が見ているかわからないんだぜ。
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