ピアニスト児玉桃の単独公演を聴くのはずいぶん久しぶりのことになる。
このところは姉麻里とのデュオを聴くことが多かった。
2008年のメシアン・プロジェクト以来ということになるだろうか。『幼子イエスにそそぐ20のまなざし』が想像以上に素晴らしく、『鳥のカタログ』のチケットも取ってしまったというのが、つい最近のことのようにもずいぶん昔のことのようにも思える。
01.J.S.バッハ:イタリア協奏曲 ヘ長調 BWV971
<細川俊夫によるプレ・トーク>
02.細川俊夫:エチュード�機銑此�2011〜2013)(�掘銑此�日本初演)
<休憩>
03.ドビュッシー:12の練習曲
<アンコール>
04.ドビュッシー:亜麻色の髪の乙女
テーマはエチュード。
バッハのイタリア協奏曲はクラヴィーア練習曲の第2巻に含まれる。
ちなみにだい1巻は6曲のパルティータ、第3巻はドイツ・オルガン・ミサとして知られるオルガン曲、そして第4巻があのゴルトベルク変奏曲である。
協奏曲とは言っているが、イタリアの協奏曲のスタイルをチェンバロ1台で具現化した曲である。演奏効果が上がるのでピアノでも引き立つ曲のひとつだと思う。
華やかないい曲である。
恣意的に情緒たっぷりに弾かれてしまうとうんざりだが、歯切れよくキビキビと弾かれるならピアノによるバッハも悪くないと思う。
モダンな響きのバッハ。聴き慣れた曲なのに新鮮に聴こえる。バッハの時代に寄り添う演奏ではなく、バッハをこの時代に引き寄せるかのような演奏。
第2楽章ではかなり神経質に細かくペダルを踏んでいた。
さて、お目当ての細川俊夫のエチュード6曲。
先日のルツェルン音楽祭での世界初演では評判は上々だったようだ。
和の侘寂を感じさせる音楽を書く作曲家だ。B→Cに通っているうちにすっかりファンになった。なので(細川氏の作風とは相容れないと思われる)ピアノによる新作が聴けるのを楽しみにしていた。
ちなみに6曲の表題は以下の通り。
�機�-2つの線-
�供�-点と線-
�掘�-書(カリグラフィー)、俳句、1つの線-
�検�-あやとり、2つの手による魔法(呪術)、3つの線-
�后�-怒り-
�此�-歌、リート-
演奏の前に作曲者によるトークがあった。
細川さん、訥々とした語り口。
で、演奏。6曲でだいたい35分くらい。
宇宙である。
しかもなんと豊饒な宇宙であることか。
何と言うのだろう、その間の持たせ方の上手さとでも言うべきか。ピアノの減衰音を美しく響かせる。
見事な曲であり、見事な演奏だった。
これが「今」の音楽。素晴らしい。
休憩を挟んで後半はドビュッシーの練習曲。
ドビュッシーがいかに革新的であったかがよくわかる曲集だ。
教会旋法を取り入れ主調が曖昧になることで独特の響きが生まれ、しかもリズム処理も斬新。そうしたドビュッシーの特徴が顕著に表れた作品ではないかと思う。
高度な技巧を要求される曲ではあるが、技巧だけでは御しきれない曲でもある。
大胆かつ繊細。そんな演奏だった。
この曲集をこれほどワクワクしながら聴いたのは初めてである。
ドビュッシーとメシアンは意外に近いのだな、そんなことも感じた。
アンコールは『亜麻色の髪の乙女』。
柔らかで暖かなタッチが印象的。まるで「おやすみなさい」のような雰囲気。
桃ちゃん、さすがだ。
充実したリサイタル。トークがあったとはいえ、終演は21:30くらいだった。
絶対に聴かなければいけないリサイタルだった、そんな気がする。
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