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2013年01月26日23:17

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杉本一文 横溝正史表紙絵展@スパンアートギャラリー

銀座のスパンアートギャラリーで興味深い展示会をやっていたので、出かけることにした。

横溝正史の表紙絵を集めた展覧会。
角川文庫版の表紙を彩ったのが杉本一文(すぎもと・いちぶん)という絵師。
横溝作品のおどろおどろしい妖しさを的確に表現していたと言えよう。
レジに持っていくのがためらわれるようなエロティックな図版も少なからずあった。

http://www.span-art.co.jp/artists/sugimotoichibun/index.html

横溝ブームのとき中学生だった。
ほぼ一年間で角川文庫版のほぼ全てを読破した。
金田一耕助という稀代の名探偵の魅力もあって、日本推理小説史上に残る名作が多い。もちろん全てが名作とは言えないが、駄作ですら楽しく読んだ記憶がある。乱歩の作品が都市小説としての趣があるように、横溝作品にもまた同様の魅力がある。
本格謎解きものの書き手としては乱歩を凌駕していたと言えるだろう。トリックメイカーであると同時に、日本の風土を生かした独特の舞台設定に長けていた。そこに耽美趣味が加わる。
イケナイ世界を覗きこんでいるような気がしたものである。ある意味インモラルな世界だということは的を射ている。

映画化とTVドラマ化が競うように行なわれ、金田一耕助役もそれぞれ石坂浩二と古谷一行という絶妙のキャスティングで話題になった。個人的には古谷一行に軍配を上げたいところだが、その後に金田一を演じた俳優を含めてもこの二人が突出していたのは間違いない。

最高傑作は『悪魔の手毬唄』ではないかと思っている。童謡殺人という仕掛けも含めて、ここには横溝らしさが全て含まれている。個人的に好きなのは『悪魔が来りて笛を吹く』で、怪奇趣味とノンストップのストーリー展開が素敵だ。
『獄門島』『犬神家の一族』『女王蜂』『迷路荘の惨劇』『仮面舞踏会』あたりも好きだし、掛け値なしの傑作である。
晩年の『病院坂の首縊りの家』には刊行時にリアルタイムで読んだという思い出がある。おぞましくも哀しい物語だった。
最後の長編となった『悪霊島』は怪奇趣味満点だったが、さすがに筆の衰えを感じられてしまったのが残念だった。

さて、前置きが長くなってしまったが、その表紙絵30点がズラリと展示されているのは壮観だった。差し替えられた表紙もいくつかあるため、馴染みのないものもある。
展示されているものはジークレー版画である。
簡単に言ってしまえばデジタル・プリントだ。
ジークレーにアートとしての価値があるかということについては人によって見解が異なる。明確な結論は出ていない。そもそも複製である版画自体がアートなのか、というところまで広がってしまい収拾がつかなくなってしまっている。
デジタルがアートの技法として成立しうることは認める。しかし、デジタル技術で複製されたものにアートとしての価値を認めるかというと私の立場は「否」であり、場合によっては「可」でもある。作者がきちんとエディション管理をし、適正な価格で取引されるなら、それは十分に価値のあるものだと思うのだ。
今回私がジークレーだと知りながら出かけた理由は、50部の限定印刷でエディション管理され、しかも取引価格が1点\10,000という良心的な展示会だと感じたからだ。(もともとここは信頼できる画廊である)
50部限定で作者のサインが入り、\10,000は安価だと思う。

『白と黒』『本陣殺人事件』がいい。
作品として『白と黒』は力作ではあるものの傑作とは言い難いものだが、この表紙絵は素晴らしい。さほどエロティックな図柄ではないのだが、少女二人がなぜだかアヤシイ。ペロンと露出しているわけではない。それゆえのエロティシズムか。
『本陣殺人事件』の方は横溝シリーズを代表する表紙である。かつてこの女性が花嫁か鈴子かという議論があったようだが、猫が描かれているという点で明らかに鈴子であり、この無垢な視線は鈴子でしかありえない。そして、読者の印象に強烈に残るのも被害者の花嫁ではなく、純真な鈴子なのである。
『本陣殺人事件』のトリックや動機はあまり評価していないのだが、舞台設定や怪奇趣味は秀逸。開放性の高い日本家屋で密室トリックは成立するかという命題にチャレンジした気概は買える。ご存じの通り、金田一耕助を初めて探偵役に据えた作品でもある。あ〜、なんだか読みたくなってきた。と言っても今は持ってないんだよなあ。

さて、1点\10,000ならこの2作品は欲しいな、と思っていた。
ところが『本陣殺人事件』は完売だった…。やっぱり人気なんだなあ。。。
しかし、入手できないわけではない。そう、セットであればまだ残っているのだ。
第1弾13点、第2弾13点がそれぞれセットだと\100,000という価格で販売されている。本来\130,000になるのだから3点ぶんお得ということになる。で、もうひとつ最新版て4点が\30,000というものある。
『本陣殺人事件』は第1弾、『白と黒』は最新版に含まれる。

作者の杉本氏が在廊していた。
気さくに話しかけてきてくれた。意外である。何というか、その画風からちょっと気難しそうな人を想像していた。
話をしてみると、とても腰の低い気のいいオジサンという感じだ。ちっとも偉そうではなくて、だからこそアーティストとしての凄さを感じた。

で、結局第1弾のセットと最新版のセットを買うことにした。合計17点で\130,000也。。。
第1弾には他に『悪魔の手毬唄』『犬神家の一族』『真珠郎』といった名品も含まれる。『真珠郎』は『本陣殺人事件』に次ぐ人気表紙だ。

というわけで、おいらはたぬぺん銀行から借金しまくりになってしまった。
だって2点ぶんしか予算がなかったんだもん。
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