デビューしたときは19歳だった。2007年のことである。
その可憐で透明な声で話題になった。ネオ・クラシック系の曲から、ルーズなポップ系の曲まで見事に歌いこなしていた。中でもエアロスミスの名バラード『ドリーム・オン』のカバーが幻想的で美しい。
ケリー・スウィート(Kelly Sweet)、アメリカのシンガーである。
その声にすっかり魅了されてしまって、翌年の来日公演をBlueNoteに聴きに行った。
CDよりもグレードの高いパフォーマンスに驚かされた。本当に美しい声だった。
あどけない表情と、それに反するような歌唱力。これは凄いことになるな、と活躍を楽しみにしていた。
しかし、新作のニュースもライヴの情報も飛び込んでは来なかった。
そして、5年ぶりの新作『Ashes Of My Paradise』(写真右)のリリース。
変化の激しいミュージック・シーンで、実績のない歌手としては、いくらなんでも長すぎである。
どうやらその間に母親と父親を相次いで亡くすという不幸に見舞われたようだ。
ショートボブにした髪はプラチナ・ブロンドに変貌していた。
まるで近未来のアンドロイドのようだ。
この新作を首を長くして待っていたみんなはどのように聴いただろうか?
1st『We Are One』(写真左)は清廉な歌声とその声を生かすような楽曲が多く、「私の声を聴いて」と強力にアピールされたアルバムだった。
そのような曲は今回のアルバムには一切含まれていない。
打ち込みサウンドのコンテンポラリー(あるいはエレクトリック)・ポップである。
ジャケットを見たときにある程度予想はついていた。
最初に聴いたときは4曲もたなかった。
気を取り直して、ひととおり聴いても印象は変わらなかった。
これはダメだな、と思った。
さんざん待たされた挙句にこの内容ではファンは誰も満足しないだろう。
それでも見限れなかったのは、ライヴまで観に行って、そのパフォーマンスが素晴らしかったからだろうか。
時間を置いて聴いてみたら、すでにわかっているせいか、さほど悪くは聞こえなくなった。
メロディーもしっかりしているし、彼女の声もやはり美しい。
打ち込み系の無機的なサウンドは気になるものの、決して駄作などではない。
繰り返し聴きたくなるような気にさせる魅力は確かにある。
歌詞世界もなかなか深い。
知らずに聴いたら傑作と思うかもしれない。
とはいえ、何度か聴かないとその魅力が伝わらないというのは痛い。
それだけ1stの印象が強烈だということでもあるのだろう。その印象を払拭させるには何度か聴いて馴染まなければならないのだ。
常にひとつところに留まらないのがミュージシャンのサガであるならば、この変化は十分に野心的ということになるのだろうし、チャレンジャブルという見方もできる。
もしかしたら、こうしたポップ・アルバムこそ彼女が本当に作りたかったものかもしれないし。
ただ、そうそう好意的に見てもらえないのではないかという気がする。
プロモーターも来日公演には動かないような気がするなあ。。。
次のアルバムでどのような手を打ってくるか、注目したい。
この路線で行くのか、さらに別なアプローチを行なうのか、はたまたデビュー当時に戻るのか。
なんにせよ、5年も待たせちゃいかんよ。
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