mixiユーザー(id:3696995)

2011年10月06日22:54

178 view

四季のシンフォニー

このシリーズ(?)、ずっと20世紀の作品を取り上げてきたので、今回は19世紀ロマン派にしよう。

ヨアヒム・ラフ(Joachim Raff、1822〜1882)という人をご存じだろうか。
スイスの作曲家である。ロマン派を担った作曲家たち、メンデルスゾーンにシューマンにショパンにリストといった人たちより10歳ほど若い。
オーケストレーションにおいてリストの協力者であったということで知られているそうだ。いくつかの作品はほとんどラフのオーケストレーションと言ってもいいものがあるそうだ。

つまりオーケストレーションのプロフェッショナルである。

リストの元を去ってから作曲家として多くの作品を発表する。
その中心にあるのが11曲の交響曲である。
まだ9番に重い意味合いのなかった時代だから、11曲も作れたんだろうな。

作品を聴くと、何故忘れられてしまったのか不思議で仕方ない。
最近になってようやく再評価の機運が高まっているそうだ。

いちばん近いのはメンデルスゾーンだろうか。
美旋律量産家で、きめ細かい情景描写にきっちりとした構成感、それに巧みな管弦楽法。
確かに共通点はある。
ただ、ラフの方はより民族的な香りが強いような気がする。メロディーもトラッドっぽい感じのものが少なくない。

1番から60分を超す大交響曲である。
どうなることかと思うと、破天荒なのはこれだけで、あとはほとんどが4楽章構成で、30〜40分くらいの曲である。
3番『森の中で』と5番『レノーレ』が名作とされている。ことにレノーレという女性を描いた5番はストーリー性が高く、巧みな情景描写もあって、確かに代表作に相応しい。50分近くを要する大交響曲である。

さて、実はこのラフ、スケールの大きいことをしている。
8番から11番の4曲の交響曲をそれぞれ四季に当てはめたのだ。そう最後の4曲の交響曲はましく「四季のシンフォニー」なのだ。
8番『春の響き』、9番『夏に』、10番『秋に』、11番『冬』というふうにそれぞれ標題を持っている。どれも4楽章構成のきっちりとした交響曲で、4曲を通して聴くとなると2時間以上かかる。
これって話題性もあると思うんだよね。聴いてみたくなっちゃうよね。
先に記したとおり、ラフの最高傑作は3番か5番と言われている。もちろん、ラフの交響曲はどの曲も傑作と言うに値するものだが、その中でも3番と5番が傑出しているのを認めるのにやぶさかではない。しかし、私はこの「四季のシンフォニー」こそラフの最高傑作だと思うのだ。
メロディーもこなれているし、何より得意とした管弦楽法が見事である。
もともとこの時代の管弦楽法というのは弦が主体で、管楽器は個々の楽器というよりも木管グループや金管グループというような括りとして扱われていた。その管弦楽法の究極の形を示したのがメンデルスゾーンだと思うが、ラフはそうしたスタイルを打ち破ろうとしている。管をグループではなく、個々の楽器として生かそうとしているのだ。結果として管(ことに木管)のそれぞれの響きが魅力的に響く。通常弦楽に割り振られるようなパートも管楽器に任せられている。
これをもっと突き進めるとマーラーの管弦楽法につながるのではないか、とも思う。
私が特に気に入ったのは10番と11番。
10番『秋に』の第3楽章のエレジーが物悲しく切なく響く。11番『冬』の第1楽章のメロディーはシンプルだが味わい深く、ほとんどこの魅力だけでその楽章を聴かせ切ると言ってしまってもいい。

メンデルスゾーンと比べてしまうのは酷かもしれないが、少なくとも旋律の魅力と管弦楽法ではシューマンやブラームスを凌駕しているのではいかと思う。
気宇壮大な音楽世界ではなく、庶民的な雰囲気なのが後塵を拝する結果になってしまったのではないかという気もする。人々の生活に根ざした音楽のように思うのだ。たとえば農民の生活を好んで描いたブリューゲルのようだとも言えるかもしれない。あるいは、同じスイスの画家アルベール・アンカーか。
先に述べた四季を描いた交響曲群も自然の雄大さを描くというよりは人々の生活を描いたという側面が強いようにも思う。それを親しみやすいと感じるかどうか、ということになるのかもしれない。

ハンス・シュタットルマイヤー&バンベルク響の全集が容易に入手できる(9枚組)。
BOXにはベックリンの『母なるヴィーナス』が使われている。ジンマン&チュリッヒ・トーンハレのマーラーの3番のジャケットに使われたものと同じ作品である。
CDは簡易型紙ジャケに収容されているが、そのジャケット・デザインは初出時のものがそのまま使われていて、全てベックリンの絵となっている。海外のマイナー・レーベルのこういうセンスは侮れないよなと思う。CDを商品ではなく、作品として扱う姿勢には好感が持てる。

この全集にはシンフォニー以外に管弦楽曲が何曲かカップリングされていて、なかなか楽しめる。中でもバッハのシャコンヌを編曲したものが聴きものだ。オーケストレーションの達人による編曲はとても楽しい。
1 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2011年10月>
日 月 火 水 木 金 土
      1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031