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2011年02月18日23:00

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月百姿

日本人のくせに日本美術の良さをわからない。私もそんな典型であると思う。
それでも好きな絵師というのはいる。伊藤若冲はその最もたるものだが、もうひとり月岡芳年という絵師が大好きだ。江戸から明治にかけてという時代の転換期を生きた絵師で、最後の浮世絵師とも言われる。その時代ゆえか、耽美的で無常感の漂う作品が多いように思う。滅びの美しさと言えるかもしれない。
芳年という人は実は無残絵で名高い。血みどろ絵師との異名もある。
広い意味での妖怪画も多く手がけていて、まず最初に私のアンテナが反応したのはそこだった。妖怪画を多く描いた浮世絵師としては歌川国芳や河鍋暁斎が知られているが、芳年も彼らに劣らぬ大家である。芳年は国芳の門下であり、暁斎とは同門ということになるから、なるほどと思わぬこともない。しかし、おおらかで豪快な暁斎の作風に比べ芳年のなんと繊細なことか。

もちろん芳年は『風俗三十二相』に代表されるような美人画も描いている。そうでなくては最後の浮世絵師などとは呼ばれまい。

そして、晩年の力作が『月百姿(つきひゃくし)』である。
月をモチーフに描いた100枚の作品だ。描かれた内容はさまざまで、まさに芳年絵画の集大成と言える。1枚の中にストーリーが見えるのが芳年らしい。晩年とはいえ、腕はますます冴えている。
実は芳年ファンと言いつつも、『月百姿』の全てを見たわけではない。いや、実物を見たものの方が少ない。
それどころか、画集で見ることも難しかったのだ。というか芳年の画集自体が少ない。それがどうしたことか、このところ刊行が続いているのだ。
先日、二玄社の謎解き浮世絵叢書として『風俗三十二相』が出て、7月には『和漢百物語』が予定されている。『和漢百物語』は妖怪画集と言ってもいい。そして、気付かなかったのだが、昨年の10月に東京堂出版より『月百姿』が出版されていたのだ。
先週末にネットをふらふらしていて見つけた。急いで紀伊國屋に走ったよ。。。
全点収録のうえに、丁寧な解説が付けられている。15,000円という高価本だが、納得の内容である。それだけ高いのなら、装丁も豪華にして欲しかったとは思うが…。
贅沢は言うまい。100点眺めているだけで幸せな気分になるよ。。。

伊藤若冲『動植綵絵』30幅に対し、月岡芳年『月百姿』。ついでに鳥山石燕の『画図百鬼夜行』シリーズ。
私にとって日本美術の最高峰である。
(ホントはもっとあるのだが、言い出したらキリがないので、ここではそう言い切ってしまう。ここでは、だけどね)

ちなみに、芳年は後年「大蘇芳年」と名乗っている。この本でもその名を用いている。

芥川龍之介、谷崎潤一郎、三島由紀夫、江戸川乱歩といった錚々たる文学者にその作品は好まれたという。名前を見てなるほどと思う。これらの作家の小説と芳年の絵とはどこか似たようなところがあるように思う。

浮世絵はヨーロッパでは今でも人気が高いが、芳年の人気もかなりのものらしい。少なくとも浮世絵に関しては日本人よりも欧米人の方が詳しそうだ。なんか癪だな…。
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