先月リリースされた三浦友理枝嬢の新譜『24のプレリュード』がレコード芸術誌6月号の特選盤に選ばれた。
めでたいことである。
高評価されたことは素直に喜んでいいのではないかと思う。
クラシック専門のレコード芸術誌はクロスレビュー方式を採っている。
評者二名がそれぞれ「推薦」を付ければ「特選」となる。
偏見かもしれないが、この雑誌は邦人の若手演奏家には少々点が辛いような印象を持っていた。よって、まだ一部では「アイドル系」と誤解されているフシのある彼女の演奏が高く評価されたのは意味のあることだと思うのだ。
まあ、識者によるCDのレビューに意味があるのかどうか、ということはとりあえず置いておいて、と。
というわけで、いつもは立ち読みで済ませているのだが、久しぶりにレコード芸術を買ってしまった。記念、というわけだね。
実際のところ、CD購入の判断材料としてレビューに左右されることはほとんどない。ただ、おおざっぱに演奏のスタイルやアプローチを知るには有効かもしれない。「参考」程度にはなるということだろうと思う。とはいえ、気に入った演奏が評者にどう評価されているかという点には興味があるし、ひとつの意見として読むにはおもしろい。
まあ、自分が肩入れしている演奏家についてどう書かれているかは気になってしまうというもの。
だから、今回の特選盤に選ばれたのは結構嬉しいのだ。
もっとも、これが評価されなければ何を評価するんだ、というくらい素晴らしい盤だと確信していた。リリース前にリサイタルで聴いて、アルバムが素晴らしいものになるであろうことは想像できた。実際にリリースされたCDは期待に違わず充実した内容のものだった。
今まで24の前奏曲というと、聴いた後に何かもやもやしたものが残ってしまい、とらえどころのない曲という苦手感があった。それを払拭してくれた演奏だった。ことに後半の「奈落の底へまっしぐら」的な展開には息を飲むほどの迫力がある。
ある意味、高評価は当然と言える。
評者のレビューの中には共感できる記述も多い。そうだろそうだろ、と頷きたくなるようなことがたくさん書かれている。ただ、打鍵の強さや低音の迫力については触れられていない。
別の雑誌では「重い」と書かれていたが、それも当たっている。
となると、特選盤レビューの内容から軽やかでしなやかな演奏を期待すると、首をひねる人もいるかもしれない。もちろん、軽やかでしなやかという要素はあるのだが、彼女の演奏は低音の鳴りがいいゆえに重心が低いのだ。つまり、この演奏を受け入れられない人もいるのだろうと思う。優れた演奏であることは間違いない。しかし、万人にお薦めできるかというと、必ずしもそうとは言えない。もちろん、それでいいと思う。
ショパンの核心を突くとともに、奏者の個性が明確に出た演奏。
まあ、能書きたれてるけど、やっと正当に評価されたな、とニンマリしたい気持ちではある。
知名度の低い『ボレロ』の好演も花を添えている。これをクロージングに持ってきたのは大正解だと思う。
話は変わるが、レコード芸術もずいぶん薄くなったという印象だ。誌面の構成は長いことほとんど変わっていないから、純粋に新譜の数が少ないのだろう。CDの売れない時代だというが、それを実感した。
そういえば、ジャズの専門誌スイングジャーナルも休刊になるという。このニュースは強烈だった。少し前に同じ出版社のADLIB誌の休刊のニュースが出たばかりだった。CDが売れないのもそうだろうが、紙媒体の雑誌が売れにくくなっているのだろう。
そういう自分も最近は立ち読みで済ませてしまっていたのだから、無罪とは言えない。
今回久々にレコード芸術を買ってみて、内容的にはやはり興味深いものが多い。
デジタル時代に突入した80年代を振り返る特集もおもしろいし、この春に素晴らしいボッケリーニを聴かせてくれたキアラ・バンキーニのインタビューもよかった。ヒラリー・ハーンやユジャ・ワンの記事もあった。
情報としての有用性は確かにあると思う。
ただ、やはりやけに薄くなってしまったのは気がかりだ。
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