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2010年04月14日21:42

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三浦友理枝@パルテノン多摩

今日は予定通り休暇を取って、平日昼間のコンサート。
薬の併用が功を奏したようで、たぬ〜もさほどつらい思いをせずに行けたようだ。
立川から多摩モノレールでパルテノン多摩の小ホールに向かう。なかなかいいホールだった。
三浦友理枝嬢のピアノを聴くのは今年初めてとなる。平日昼間、普通ならよほどのことがない限り行かないのだが、今回バッハを弾くというのでどうしても聴きたかったのだ。

01.JSバッハ:フランス組曲第2番
02.ラヴェル:古風なメヌエット
03.ラヴェル:ソナチネ
<休憩>
04.ショパン:24の前奏曲
<アンコール>
05.ラヴェル:水の戯れ

今はチェンバロで弾かれることが主流になったバッハだが、かつてはピアノで演奏されることも多かった。チェンバロに馴染んでしまった耳にピアノのバッハに違和感を覚えることは否定できない。確かに普段ピアノによるバッハを積極的に聴くことはほとんどなくなった。
だからこそ、今日の演奏は楽しみだった。ショパンと近現代音楽を得意とする彼女がバッハをどう料理するのか興味津々だったのだ。
フランス組曲は好きな曲集だ。優美な舞曲集の集まり。第2番はハ短調という調性もあって、憂愁の漂う曲が並ぶ。
磨き上げられた美音によるバッハというのも悪くない。彼女にしては比較的おとなしめだったとは思うが、低音の鳴りがいいので、バッハのポリフォニーがよくわかる。ペダリングに頼らず、バロック様式に近づいた演奏だったと思う。しかし、反復を省略しているところがあったとはいえ、テンポが速かった。ある程度反復を省いても12分前後はかかると思うが、彼女は8分少々で弾き切った。2曲目のクーラントは超高速。鍵盤の軽いチェンバロならまだしも、重いピアノでの高速プレイは驚くばかり。

ラヴェルの2曲はバッハと対比させる意味で選ばれたようだ。メヌエットは古い舞曲(よって古風な、というのは重複表現となるが、ラヴェル独特の皮肉っぽい言い回しなのだろう)だし、ソナチネは小さいソナタという意味で、ラヴェルには珍しく構成感のキッチリした曲。
彼女得意のラヴェルだから安心して聴いていられる。ラヴェルは美音で弾かれてこそ映える。

休憩を挟んでショパンの前奏曲集。
昨年のせんくらでも聴いた。
私はショパンの中でこの前奏曲集は少々苦手に感じていた。40分くらいの中に24曲。1分に満たないものも少なくない。『雨だれ』(15番)のように独立して弾かれる曲もあるし、太田胃酸のCMで馴染みすぎたメロディー(7番)もあり、とらえどころがないという印象だった。場面転換の激しさについていけないということもあったのだろう。
最近は「走馬灯のように駆け巡るもの」というふうに捉えるようになって違和感はなくなった。一瞬の感情の振幅に耳を凝らすと、ショパンのさまざまな想いが見えてくるような気がする。
そういう点ではショパンの曲の中でも相当難しい部類に入るのではないかと思う。
仙台のときは後半に向けて盛り上げていくような印象だったが、今回は1曲目からテンション全開。一気呵成に弾き切ったという感じだ。
何度も繰り返し言い続けてきたことだが、彼女のショパンはビターだ。たとえば『雨だれ』は本当に雨の滴のような粒立ちのいい高音に対比するかのように、低音がガッチリ鳴っている。打鍵は強いのに、音が濁らない。20番の重々しい葬送行進曲のような曲も彼女の低音が生きる。迫力はあるが荒っぽくはない。
終曲24番の激しさは思わず体が動いてしまうくらいに心臓を鷲掴みにされる。これぞ私の曲、と言わんばかりの強靭な左手による大迫力の低音に戦慄すら感じる。
それでいて重厚感はなく、歌心もたっぷりだ。硬派ではあるが、生き生きとした溌剌とした演奏に仕上がっていた。優美な曲ではクリスタルのような美音でしなやかにメロディーを歌わせる。

アンコールの『水の戯れ』は嬉しい。ラヴェルの曲の中でもとりわけ美音を要求される曲。両手が交叉することの多い難曲でもある。そして、本当に彼女に似合う曲。これ以上に美しい『水の戯れ』はありえないのではないかと思うほど。

こんなピアノはなかなか聴けない。すごい個性の持ち主だ。

まだまだ若さを感じさせる部分もある。しかし、それでいいと思う。若さは瑕ではなく可能性なのだ。
彼女の演奏にはワクワク感がある。
演奏の素晴らしさもさることながら、次はどんなプログラムを組むのだろうという興味と、あんな曲も弾いて欲しいという期待、そんなものも含めてワクワクさせてくれるのだ。

さて、そんな彼女の4枚目のアルバムが来週21日にリリースされる。24の前奏曲集を核にしたショパン・アルバム。これも楽しみだ。

そして、9月7日には本領発揮とも言うべきプログラムが組まれたリサイタルがある。オペラシティ・リサイタルホールにて、「B→C」と題されたシリーズ。バッハからコンテンポラリー、つまりバッハと現代曲を入れればどんなプログラミングをしてもいいというリサイタル。
バッハは今回のフランス組曲第2番。おなじみラヴェルやちょっと意外なフランクがあり、現代曲ではシマノフスキ、メシアン、リゲティ、バーバーといった名前がずらりと並ぶ。
「実は技巧派で、現代曲に強い」という彼女ならではのプログラムだ。今から楽しみで仕方ない。
終演後に話を聞いたら「ちゃんとできるかどうか…」とはにかんでいた。

「B→C」の詳細はここ http://www.operacity.jp/concert/2010/100907/index.php

やっぱり彼女からは目と耳が離せない。
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