今日は王子ホールにて、キアラ・バンキーニ率いるアンサンブル415のコンサート。
風変わりな名称の「415」とはAのピッチということらしい。つまり、古楽団体である。
あらかじめ言っておくが、別に古楽というものに思い入れがあるわけではない。心を動かしてくれる音楽であれば、ピリオド楽器で奏でられたものであろうと、モダン楽器で奏でられたものであろうと関係ない。
さて、今回はボッケリーニばかりのプログラム。
ボッケリーニはハイドンと同世代だが、より抒情的でロマン派を思わせる作風が個性的だ。美旋律の宝庫でもある。自身がチェロの名手だっただけあって、チェロを補強した弦楽五重奏曲の名品が多い。もっと聴かれて然るべき作曲家だと思う。
01.弦楽五重奏曲 ト短調 作品29-6
02.弦楽五重奏曲 ハ短調 作品31-4
<休憩>
03.スターバト・マーテル(1781年原典版)
<アンコール>
04.スターバト・マーテルより第8曲
キアラ・バンキーニ(音楽監督、ヴァイオリン)
エヴァ・ボーリ(ヴァイオリン)
ペーテル・バルチ(ヴィオラ)
ガエータノ・ナジッロ(チェロ)
サラ・ベンニーチ(チェロ)
マリア・クリスティーナ・キール(ソプラノ)
前半の2曲の五重奏曲のうち、作品29-6は初めて聴く曲。ボッケリーニらしい美旋律の見本市みたいな曲だ。特に第2楽章の中間部が美しい。
作品31-4は好きな曲だ。第4楽章のヴィオラで奏でられる瞑想的なメロディーが印象的。
演奏は5声のバランスがよく、躍動感がある。それでいて落ち着いた雰囲気もある。情に流されない理知的なアプローチだと感じるが、歌心は豊かで、音に暖かみがある。
生でボッケリーニの曲を聴くのは初めてだったが、十分に満足のいくものだ。
とはいえ、メインは『スターバト・マーテル』だ。
磔刑に処された我が子を哀しむ聖母を歌ったカトリック教会の聖歌。ペルゴレージの曲が名品として知られている。ボッケリーニの曲は知名度こそ高くはないが、素晴らしい曲である。近年1781年の原典版で演奏されるようになって、その真価がようやく披露されたという印象だ。1800年の改訂版はソプラノとアルトとテノールに弦楽合奏という編成。これ自体ももちろん悪くない。ところがソプラノ独唱と得意としたチェロ補強版の弦楽五重奏という原典版だと「至高の名曲」となる。繊細で抒情的。哀しみの色合いが強いのはもちろんだが、穏やかでむしろ晴朗なメロディーも少なくない。編成も曲調も異色のスターバト・マーテルと言えそうだ。
確かにこれはピリオド楽器の方がいいだろうなと思う。
ソプラノは朗々とした声よりも、清楚な声の方がいい。しかもマリア・クリスティーナ・キールというソプラノの声は深い。伸びやかな高音も素晴らしいが、深みのある中音域が魅力的だ。まさに慈愛を感じさせる歌唱だった。ソプラノの声質が自分に合うかどうかが心配だったのだが、全くの杞憂だった。
何度も言うが、本当にいい曲だ。今日改めてそう感じた。
キアラ・バンキーニという人はいい年の取り方をしたオバサマという雰囲気だ。求道者のような趣もある。あのジュリアーノ・カルミニョーラが今でも古楽器演奏に関して助言を求めることがあるというからすごい。
なんにしてもみんなそれぞれ演奏している姿に味がある。
第1チェロのガエターノ・ナジッロはソロでも活動している人らしい。
アンコールはスターバト・マーテルの中から穏やかな曲の再演。
感動的なスターバト・マーテルの後では、アンコールは何をやっても蛇足になるのでは、と感じていた。というわけで、スターバト・マーテルからの曲を持ってきたのは大正解だったと思う。いい感じで余韻が残る。
いいコンサートだった。
たぬ〜はかなり無理をしていたようだが、それでも無理をして行った甲斐があったという。
プログラムにサインをいただいた。どれが誰だかわかんない。。。
なお、今回のコンサートは4/19(月)のNHK-BS「クラシック倶楽部」で放送されるという。
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