4月の二期会のオペラ『ルル』はルルという女性像を一新させ、さらに未完の2幕でも十分完結できることを示した画期的な舞台だったと思う。
ダブルキャストでルルを歌うソプラノはどちらも聴いたことが無かったので、事前にYouTubeなどで聴いてみて、声の好みで宮地江奈が歌う日に決めた。自分にとってはその選択は正解だったのだと思う。
スーブレット役が似合いそうなチャーミングな声で見事にこの難役を歌い上げたのだ。しかも従来の悪女のイメージを覆すかのような歌唱だった。もちろんそれには斬新な演出があってこそなのは確かだが、それに応えるには相当な力量がなければ無理だったろう。
その一週間後に高レベルのアマオケをバックにシュトラウスの『四つの最後の歌』を歌った。感情の上澄みを掬い取ったような純度の高い歌だった。
聴いたのはその二回のみ。
10月にはリサイタルも予定され、それ以外にもチラホラ聴く機会はありそうだった。
それがいきなりシークレットっぽいリサイタルが企画されたのだ。
彼女がLINEを始め、その中の情報に今回のリサイタルがあった。
「ともだち」先行予約ということだったが、一般に告知されなかったので、「ともだち」枠で満杯なってしまったのだろう。
30名くらいで一杯になってしまいそうなサロンなので、まあそうだろうと思う。
たぶんルルの前と後では彼女を取り巻く環境に変化があったのだろうと想像する。
Le Salon de Clavier というサロンはHPもあるが、田端ということ以外の住所や外観を公開していない。予約完了時のメールに場所の詳細が記載されている。
いろいろな配慮があっての措置だろうが、なんとなく秘密めいていて良い。
白を基調にした本当にサロンのような空間。
宮地江奈:ソプラノ
三原有紀:ピアノ
10月のリサイタルと同じデュオ。
彼女は黄色のドレスで登場。
01.グノー:わたしは夢に生きたい(ロメオとジュリエット)
02.プッチーニ:私のお父さん(ジャンニ・スキッキ)
03.越谷達之助:初恋
04.木下牧子:竹とんぼに
05.武満徹:小さな空
<小休憩>
06.プッチーニ:わたしが街を歩くと(ラ・ボエーム)
07.モーツァルト:おいで、かわいい人よ(ドン・ジョヴァンニ)
08.モーツァルト:ああ私は恋をして、本当に幸せでした
09.小林秀雄:落葉松
<アンコール>
10.モーツァルト:恋人よ、早くここへ(フィガロの結婚)
間近で聴くのは初めてなので緊張した…。
声が素晴らしいことも、歌唱技術が高いのもわかっていた。
声量も凄い。新国立劇場の上の方まで楽に届くのだから当然だが…。
そして見せることに長けている。演技ではなく、その役柄になり切っている。だから所作も歌の一部だと思える。
観客の目を見て歌うこともあり、ドキッとすることも一度や二度ではなかった。
『小さな空』では最後感極まって涙する場面も。
実際のところ、聴いていてグッと来るものがあった。歌に説得力があるのだ。
三原有紀のピアノも聴かせるところが多かった。
妙な言い方だが、涼やかな、あるいは爽やかなピアノだった。歌伴ということもあったろうとは思うが。
ちなみにピアノはニューヨーク・スタインウェイの1963年モデルと思われる。
歌も演奏も素晴らしい。心を揺り動かされる歌だ。
さらにMCも上手い。もしかしたら、歌っている時間より喋っている時間の方が長かったのでは、と思うほど。
それも楽しいMCなのでリサイタルの一部と思える。
普段とは違ってフレンドリーな時間にしたかったようだ。
終演後はサイン会と撮影会。
グッズ販売というのがあって、何かと思えばポストカード。それにサインということだ。
さらにあわよくばと持って行ったルルのパンフレットにもサインをいただいた。
X上では交流はあるものの、実際にお会いして話をするのは初めて。それも楽しかった。
明るいキャラも魅力的だ。
最後にお土産をいただいて帰途に就いた。
箱に入った高級なお菓子。人数分用意してくれていた。
なんだか幸せなリサイタルだった。
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