先週の新国立の『ルル』は凄まじかった。2幕版の決定版と言っていいように思う。
そのルルを歌った宮地江奈が素晴らしく、透明感のあるチャーミングな声でルルの多面性を演じていた。
恐ろし気な悪女ではなく、無垢で無防備なこわれもののような女性を演じるには彼女のような声でなくてはならなかっただろう。
後年振り返ったとき、おそらく彼女にとってマイルストーンとして語られるものになるだろうと思う。
そんな彼女の歌を聴けるというので行ってみることにした。
R.シュトラウスの曲ばかりを集めたプログラム。
中でも『皇紀二千六百年奉祝曲』は珍しい。これまで日本では数回しか演奏されたことがないらしい。
シュトラウスのオーケストラ曲の実演コンプリートを目指すのにハードルを上げている曲であろう。
平林遼&オーケストラ・ラム・スール
宮地江奈:ソプラノ
01.R.シュトラウス:交響詩『死と変容』
02.R.シュトラウス:四つの最後の歌
<休憩>
03.R.シュトラウス:交響詩『ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら』
04.R.シュトラウス:皇紀二千六百年奉祝曲
<アンコール>
05.R.シュトラウス:ミュンヘン
『死と変容』はオーソドックスな解釈で、テンポ設定も妥当。
このオケは巧い。弱音の表現がとても良い。
平林氏はときに飛び跳ねたりするほどの身振りの大きな情熱的な指揮ぶりだが、実は理知的に音楽を組み立てる人なのだと感じた。
さて、お目当ての最後の四つの歌。
宮地江奈は透明度の高い繊細な声で歌う。敢えて抑えていたのだろう。
美しい声だからこそ表現しうる寂莫感。
重くなく、かといって軽くもなく、上澄みを掬い取ったような純度の高さ。
さすが、これがルル歌手の歌か、と納得。
この難曲を良い意味でわかりやすく歌う。もったいぶらないというか、歌そのものを届けるというか。
なんにせよ、その美しい声と、心にすっと入り込んでくる歌に感銘を受けた。
さらに、この曲はヴァイオリンのソロがあるのだが、コンミスの音が繊細で美しかった。
後半の『ティル』は普段聴き慣れているものとはずいぶん印象が違っていた。
新解釈、なのかもしれない。テンポ設定が独特だったように思う。
とはいえ、違和感は無く、十分に楽しめた。必然性があったのだろう。
この指揮者はなかなかおもしろいアプローチをしてくるようだ。
最後は、珍しい『皇紀二千六百年奉祝曲』。実演はもちろん、録音でも聴いたことが無い。
かなり派手な曲。演奏効果は上がる。難しそうでもある。
いいものを聴かせてもらった。
アンコールもシュトラウス。ワルツだね。
宮地江奈がいちばんの目的だったわけだが、全体通してとても楽しめた。
指揮者は才気煥発だし、オケはそれに十分応えられるだけの実力がある。
このオケはかなりの実力だぞ、と。
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