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2015年05月14日23:01

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Van Der Graaf Generator

いちばん好きなバンドは、と訊かれたら、今ならうっかりBABYMETALと答えてしまいそうだが、そこはやはりヴァン・ダー・グラーフ・ジェネレイター(Van Der Graaf Generator、略してVDGG)ということになる。

英国プログレ界の奥座敷。
ここまでブルースやロックンロールの影響がないバンドも珍しい。
キング・クリムゾンだって一時期はブルース得意のメンバーがいたし、ジェネシスのフィル・コリンズのモータウン好きは有名だし、イエスのジョン・アンダーソンもそのルーツはポップスだし、ピンク・フロイドなんてブルース・バンドと言える側面もある。プログレの大御所だってそうなのだ。
けれどもVDGGの音楽は既定のポップ・ミュージックの形式に囚われないところで成立している。かといってクラシック的でもなくジャズ的でもない。
長尺の曲もイエスやジェネシスのようにガッチリ構成されたものでもないし、キング・クリムゾンのように壮絶なインプロヴィゼーションを繰り広げるわけでもない。
プログレ界にあっても特異なのだ。
しかも編成はリード・ギターを欠き、ベース・ギターもなく、サックスが加わるという、これまた特異なものだ。
実働期間が短かったので、ポップ化の波にさらされずに済んだ。いや、さらされたとしてもポップ化することなどなかったろうが。今世紀になってまさかの再結成を果たし新作もいくつも発表しているが、相変わらず先鋭的な唯一無二の「ロック」を聴かせてくれている。

そのVDGGがカリスマ・レーベルに録音した70年代のアルバムがリイシューされた。
それもSACD、プラチナSHM-CD、SHM-CDの三種のフォーマットによって。
私はよほど劇的な音の変化がない限り、そうそう買い直すことはない。すでに現行のものでもずいぶん良くなっているし、微妙な違いとなると私の駄耳ではわからない。
それでもVDGGに関しては買い直したのには理由がある。

先にも述べたように、VDGGの黄金期には専任のベーシストがいない。その穴を埋めるのがオルガンのペダルである。いや、もしかしたらペダルの音量を上げることでベース・ギターの居場所がなくなってしまったのかもしれない。
そのくらいVDGGは重低音が響くサウンドなのである。おそらくこれほど重低音が響くロック・サウンドはそうそうないに違いない。メタルの重さとは質を異にする重さなのである。それは持続音が可能なペダルの機能を十分に生かしたものなのだ。
それゆえ再生の難しいサウンドでもある。だからかどうなのかはわからないが、これまでに何度かリイシューされたCDではその低音が十分に出ないリマスタリングになっている。私は国内盤のLPを持っていなかったのでわからないが(当時すでに廃盤)、国内盤は低音の音量がずいぶん抑えられたものになっていたらしい。
最初にCD化されたときに気になった違和感がそこだった。(輸入盤)LP時代にはあんなに響いた低音がなんだか薄くなったような気がしたのだ。しかしこれがCDで「音がクリアーになる」ということなのかなあと思っていた。そうした音のバランスは2005年のリマスター盤でも同じだった。そして今回はオリジナル・マスターを限りなく再現するリマスタリングが施されたということで本来の重低音が甦ったのだ。
CD時代になって30年くらいを経て、ようやくVDGG本来のサウンドを聴けるようになったというわけだ。
まあ、それこそ微妙な違いなのかもしれないが…。

黄金期のメンバーは以下の通り。

ピーター・ハミル:ヴォーカル、ギター、ピアノ
デヴィッド・ジャクソン:サックス、フルート
ヒュー・バントン:キーボード、ベース
ガイ・エヴァンス:ドラムス

では、ここで彼らのアルバムを一気に紹介してしまおう。

『The Aerosol Grey Machine』(1969年)
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デビュー・アルバム。VDGG黎明期と言えようか。とはいえ、意外にいい曲が多い。ハミル、バントン、エヴァンスはすでに集結。ジャクソンはまだ加わっていない。キース・エリス(ベース)、クリス・ジャッジ・スミス(サックス、ヴォーカル)の演奏が聴けるのは貴重。そうは言ってもやはりマニア向けか。
ここで一度解散。

『The Least We Can Do Is Wave To Each Other(精神交遊)』(1970年)
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再結成後カリスマ・レーベルとの契約を得て、これが事実上のデビュー・アルバム。今回の再発もここから7枚。
スミスとエリスの代わりにジャクソンとニック・ポッター(ベース)を加えたラインナップ。教会風のオルガン、フリーキーなサックス、そこに乗る自在なヴォーカル、といったVDGGの音楽はここで確立。遅れて同じカリスマ・レーベルから再デビューを果たすことになるジェネシスがいかにVDGGの影響を受けたかがよくわかる。
私がVDGGを知ったのがこのアルバムだった。

『H To He Who Am The Only One(核融合)』(1970年)
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ポッターが途中脱退。その穴はバントンのベース・ペダルが埋める。さらにキング・クリムゾンのロバート・フリップ(ギター)が客演。作風は前作の延長線上にあるが、抒情性と混沌とのコントラストがさらに強烈になっている。このときすでにハミルのヴォーカル・スタイルはピーター・ガブリエルやデヴィッド・ボウイに大きな影響を与えていた。
形而上的で哲学的なハミルの歌詞も独特で、まさにロック界最高の詩人であろう。

『Pawn Hearts』(1971年)
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前期最高傑作とされる作品。A面2曲にB面1曲といういかにもプログレっぽいアルバム構成。最もプログレ寄りのアルバムであろう。フリップの参加も話題だが、そのフリップがさほど目立たないほどVDGGの個性は凄まじい。VDGG流のシンフォニック・ロックとも言えそうだ。23分にも及ぶ大曲『A Plague Of Lighthouse Keepers』は場面転換の激しいカオスの坩堝のような作品。これが今でもライヴでフルサイズ演奏されているらしい。
当時このアルバムだけ何故か日本盤はリリースされなかった。アンダーグラウンド過ぎたからだろうか。
そして、ここで解散を迎えてしまう。

プログレが大活躍する73年という時代、VDGGは不在だった。
ハミルはソロ活動を継続し、その制作にはVDGGのメンバーが加わることも多かった。
そんなこんなで75年に再結成を果たす。

『Godbluff』(1975年)
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ハミルはアコースティック・ギターからエレクトリック・ギターに持ち替え、バントンのキーボードはほぼオルガンだけになる。アグレッシヴでシンプルになったサウンドはもはやプログレと言うには無理がある。この再結成は世界中から支持されたようだ。ハミルの紡ぐ言葉にはバントンのオルガンによる音楽的裏付けが必要なのだと思う。ハミルの奔放な歌唱を音楽に留め置くのがVDGGというバンドなのであろう。長尺曲4曲はどれもハイ・テンション。チャチャチャのリズムを取り入れるなど、この時代にしてはかなり新しい。
メタル界を代表する歌手であるアイアン・メイデンのブルース・ディキンソンや、最もパンクらしかったセックス・ピストルズのジョニー・ロットン(後にジョン・ライドン)に影響を与えたのはこの時期のハミルだろう。まさしくハミルは慟哭の詩人である。

『Still Life』(1976年)
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前作から間を置かずに発表された。この時期のVDGGがいかに創作力に溢れていたかがわかる。メロディーが明確な曲が多く、この時期の、というよりVDGG全キャリアを通じての最高傑作ではないだろうか。
表面的にはプログレではないが、その本質はまさにプログレッシヴ。
アルバム・タイトルにもなった『Still Life』は荘厳かつ抒情的な名曲。
このアルバムについては以前取り上げたことがあるのでそちらも参照されたい。
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1937627429&owner_id=3696995

『World Record』(1976年)
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前作と同じ年にリリース。ほぼ二年足らずの間にアルバムを3枚もリリースしたことになる。凄まじいエネルギーである。しかし、このアルバムは前2作と比べるといくぶん色合いが違っている。よりシンプルになり、枯れた風景を思わせる。辿り着いたロックの極北ということでもあるのかもしれない。最も早くレゲエのリズムを取り入れたことでも知られている。ハミルのギターはより存在感を増し、バントンはシンセを導入しているようだ。
再結成後のあまりにも高いテンションが早々長く続くわけでもなく、バンドはここで崩壊する。
VDGG告別の曲となった最後の『Wondering』は感涙ものの名曲。

『The Quiet Zone / The Pleasure Dome』(1977年)
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サウンドの核だったバントンが脱退、遅れてジャクソンもバンドを離れてしまう。
ハミルとエヴァンスは旧知のポッターとヴァイオリン奏者のグレアム・スミスを招き入れる。ジャクソンがゲスト扱いで参加し、名義をヴァン・ダー・グラーフとしてリリースしたアルバム。
バントンのオルガンがなくなり、ハミルのソロ作品といった印象が強い。そう聴くならば優れたアルバムである。しかしやはりバントンの抜けた穴は大きく、VDGGはここで完全に終焉を迎える。

70年代、実働期間が短かったにもかかわらず、さまざまな音楽シーンに影響を与えたVDGG。
再結成が望まれていたが、それはありえないと誰もが思っていた。
しかし、今世紀に入りまさかの再結成。それも黄金期のメンバーで。

『Present』(2005年)
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再結成後のアルバムは2枚組でリリースされた。2枚目は全曲インプロヴィゼーションによるインストゥルメンタルになっている。ハミルのヴォーカルもバントンのオルガンもジャクソンのサックスもエヴァンスのドラムも健在。現代にも通じるロックというより、先鋭的なロックであった。決して流行りの懐古趣味的な再結成なんぞではなかったのだ。

『Trisector』(2008年)
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残念ながらジャクソンが脱退し、トリオ編成となる。サックスがなくても音の薄さは感じない。充実した作品だ。トリオになりますます各人の演奏が冴える。70年代中盤の頃のスタイルを踏襲してはいるのだが、そもそもそれが唯一無比だったのだ。その斬新かつ異型な音楽は今の時代でもそのままの存在感を放っている。年は取ったが全く丸くなることがない。混沌とした音宇宙は健在。
この年VDGGとしては初めての来日を果たす。

『A Grounding In Numbers』(2011年)
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年老いてもVDGGの挑戦は止まらない。曲をコンパクトにまとめ、アレンジもシンプルにし、それでいながらVDGGらしいサウンドを構築するという冒険に出た。結果としてよりロック色が強くなったものの、どこを切ってもVDGGという傑作に仕上がった。前作も傑作だと思ったが、これはさらに野心的な傑作に仕上がっている。この人たちは本当にすごい。

『ALT』(2012年)
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現時点での最新作はこれ。従来のアルバムとは異なり全編インストゥルメンタルという問題作。再結成後のレコーディングの際の素材を再構成したものらしい。そうたびたび聴くことはないが、彼らの音に対する考え方を窺うことができ興味深い。アヴァンギャルドな音のコラージュ。現代音楽的である。
この年、バンドとしての二度目の来日を果たす。プログレ・フェス参加のためだったので、単独公演は1日のみだったが、そのライヴが素晴らしかった。

バンドは今でも継続中。
そろそろ新作を出してもいい頃ではないか?
贅沢は言わないが、それでも新譜のリリースと来日公演を願う。
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