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2015年04月01日23:32

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アレクサンドル・メルニコフ@東京文化会館小ホール

アレクサンドル・メルニコフによる24の前奏曲シリーズも3回目の今日が最後。
会場を東京文化会館に戻して、いよいよショパンの登場である。どうせなら後半のスクリャービンも24の前奏曲にしてくれればよかったのにと思うが、これは別の人が演奏する公演が組まれているから避けられたのだろう。

01.ショパン:24の前奏曲 Op.28
<休憩>
02.スクリャービン:幻想曲 ロ短調 Op.28
03.スクリャービン:2つの詩曲 Op.32
04.スクリャービン:ピアノ・ソナタ 第3番 嬰へ短調 Op.23
05.スクリャービン:5つの前奏曲 Op.74
<アンコール>
06.プロコフィエフ:束の間の幻影 Op.22より、Ridicolosamente
07.ブラームス:6つの小品 Op.118より、バラード
08.シューマン:子供の情景 Op.15より、見知らぬ国と人々について

おそらくショパンの最高傑作は24の前奏曲だろうと思うようになった。
そしてとてつもない難曲であるということにも気付いた。技術的にはもちろん、断片のような短いながらも様々な曲を弾き分け、なおかつ全体が有機的に結合されて聴こえなければならない。演奏者の深い洞察力を問われる作品だと思うのだ。
それゆえか、満足できる演奏は少ない。
メルニコフの弾くショパンは即興的な趣が濃い。それは決してスタンダードではないかもしれない。けれどもなんと雄弁なことか。
表現の振幅が大きく、テンポの設定も大胆だ。そのちょっとした節回しが心を捕えて放さない。
彼は『雨だれ』を速いテンポで演奏する。この有名な曲にことさら意味を持たせない。それでいてどこか不安を煽る。そして終盤にかけてさらに表情付けが濃密になる。終曲のまるで弔鐘のような最後の低音にメルニコフは何を思うのだろう。
個性的ではあるが、この演奏には押しつけがましさがない。イマジネーションが広がる。厳しくも優しい、そんな世界だ。
メルニコフがこのような演奏をするとは驚きだった。
底の見えないピアニストである。

後半はスクリャービン。
まだこちらの世界にいた頃の幻想曲と3番のソナタが中心。
まだ調性感は残っているが、スクリャービンらしい官能的な響きに溢れている。
もちろんメルニコフは情に流されるような演奏はしない。頽廃的な雰囲気も演出しない。過剰な衣装を纏わせないぶん、その腐りかける前の美しさが際立つ。
5つの前奏曲は向こうの世界に行ってしまった後の作品。もはやとろりとしたようなメロディーはなく、神秘的な和声が響く。向こうに行ってしまっても官能的で美しい響きは変わらない。
メルニコフのスクリャービンは音そのものの美しさで聴かせる。空間さえも計算して捉えているような、そんな大きな演奏だった。

これでメルニコフのリサイタルは全て終了。
いずれも聴き応えたっぷりの充実したリサイタルだった。
この人のピアノには強く心に訴えかけてくるものがある。
今回3回とも聴けて良かったと思う。いや、これは聴くべきだったのだ。どれかひとつでも外していたら、絶対に後悔していたに違いない。

早くも次の来日が楽しみだ。
イザベル・ファウストとのデュオもまた聴きたいと思うし、評判のジャン=ギアン・ケラス(チェロ)とのデュオもいい。この三人でのトリオも聴いてみたい。

握手をした手は大きくぶ厚かった。
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