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2015年03月17日23:21

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運命

一昨日の夜のNHK-Eテレの「クラシック音楽館」、途中から見たのだが、つい見入ってしまった。
ジャナンドレア・ノセダ指揮のNHK交響楽団によるベートーヴェンの第5交響曲。
『運命』という厳つい名前のついた超有名曲である。

テンポが速く、メリハリが効いて、なんだかとても新鮮に聴こえた。
あたりまえのように耳に馴染んでいた『運命』ではなかった。
ベートーヴェンのハ短調の交響曲、とだけ言った方が相応しかったような気がする。
賛否を巻き起こしそうな演奏だったが、インパクトは強烈だった。
グールドが弾いたモーツァルトのソナタを聴いたときの衝撃に近いものがあったように思う。
みんながみんな同じような演奏をしたのではつまらない。万人受けする演奏よりもおもしろい。好きか嫌いか、それでいい。

いつもは弱点として聴こえる第1楽章再現部で第二主題を導くファゴットがそうは聴こえなかった。ずっとこれがホルンだったらと思わずにはいられなかったのに、初めてそうは思わなかった。
あの当時ホルンに出せない音だったからではなく、ベートーヴェンはファゴットでそう響かせたかったのではないか、そんなふうに感じた。

おそらくベートーヴェンのシンフォニーの最高傑作はこの5番だろう。
第9は確かに先進的な作品であったろうが、楽想の豊かさと管弦楽法の冴えでは5番には及ばない、と私は思う。
もちろんベートーヴェンともなるとそれぞれの曲にそれぞれファンが付いているに違いない。それを承知のうえで、シンフォニーの理想を具現化したものがこれだと思うのだ。

この曲は『運命』というニックネームで損をしている。そんなふうに呼ぶのは日本だけらしい。
苦虫を噛み潰したようなベートーヴェンの肖像画とあいまって、なんだか説教臭くて強面なように思えてしまう。
その印象で敬遠していた人も少なくないのではないか。今さら『運命』もないでしょ、とナナメに見ていた人もいるに違いない。
私もかつては苦手だった。嫌いというのではないが、「別に励まされたかあねえよ」といった感じだったろうか。正しすぎるように思えていたのだ。そもそもベートーヴェンの曲自体が苦手だったと言ってもいい。
それがこのごろずいぶん変わってきた。良いものを良いと素直に思えるようになってきたのかもしれない。
とは言っても、第9はやはり苦手なのだが…。

単純に5番はカッコいいと思う。
いろいろな意味で(作風や構成や楽器法など)古典派とロマン派の分水嶺となる作品なのではないか。
名曲中の名曲で、これを好きだというのは気恥ずかしいものがあるかもしれないが、やはりカッコいいと思うのだ。第4楽章なんかはロック・アレンジにしたらかなりクールなものになりそうだ。

うちにはベートーヴェンの交響曲全集は1セットしかない。バラでもほとんどない。
クーベリックが9つの名オーケストラを振り分けた企画色の強い全集で、LP時代から馴染み深い録音である。私はクーベリックという指揮者が好きなので、彼がさまざまなオケを振るというだけでワクワクさせられたし、オケによる音色や雰囲気の違いを楽しめるというのも贅沢に思えたものだった。
その思いは今も変わらない。優れた全集であることは間違いない。
ただ、手兵のオケ(第9担当のバイエルン放送響)であればもっと掘り下げた解釈や表現が可能だったのかもしれないと思わなくもない。
5番担当はボストン響。やや遅めのテンポで悠揚とした足取り。現在主流の速いテンポのキビキビしたスタイルではないが、やはり説得力があると思う。
まあ、5番となるとクライバー&ウィーン・フィルということになってしまうのかもしれないが…。

なんにせよ、人生も折り返し点をとうに過ぎたこのあたりでベートーヴェンと真剣に向き合ってみようかな、などと思うのであった。

ホントか?
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