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2015年02月22日21:40

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テナー・マッドネス

ずいぶん昔のことになるがジョン・コルトレーンに夢中になっていたことがある。特にモードからフリーに飛び込んでいくあたり。レーベルで言えばインパルス時代である。新しいジャズを切り拓いていくという気概に心打たれたのだろう。
しかし最近は50年代にマイルスのグループにいた頃のコルトレーンの方が好きである。なんだかんだ言ってハードバップが好きなのだ。モードだフリーだと息巻いていたのは若くて粋がっていただけなのかもしれないなどとも思う。
そうなるとテナー・サックスのもう一人の大巨人ソニー・ロリンズがやたら良く聴こえるようになるから不思議なものである。
ロリンズという人はコルトレーンのように音楽理論上のジャズを発展させた人ではない。旋律的で霊感に富んで、そしておおらかな演奏のみで大巨人の域まで達した人である。そんな表現は似つかわしくはないかもしれないが、愛すべきテナー・マンだと思うのだ。

名盤はたくさんあるが、今日取り上げるのはこれ、『テナー・マッドネス』。アルバムを量産した1956年の作品である。
絶頂期のマイルス・バンドのリズム・セクションを得て、あたかもロリンズ・ミーツ・ザ・リズム・セクションと言うべき素晴らしい演奏を繰り広げる。
しかもちょうどこのとき、コルトレーンがサックスを持ってふらっとスタジオに遊びに来ていた。それで共演ということになった。
収録曲とメンバーは以下の通り。

01.テナー・マッドネス(Tenor Madness)
02.恋人が行ってしまったら(When Your Lover Has Gone)
03.ポールズ・パル(Paul's Pal)
04.マイ・レヴェリー(My Reverie)
05.世界一美しい娘(The Most Beautiful Girl In The World)

ソニー・ロリンズ:テナー・サックス
ジョン・コルトレーン:テナー・サックス(01のみ)
レッド・ガーランド:ピアノ
ポール・チェンバース:ベース
フィリー・ジョー・ジョーンズ:ドラムス

『テナー・マッドネス』はロリンズ作のブルース。
最初にソロを取るのはコルトレーン。お得意の音を敷き詰めるような充実したソロである。続くロリンズはまるであくびをするような間抜けな音で始めてしまう。これでコルトレーンの濃密な世界から一気に自分の方に引き寄せることに成功している。「では、始めますか」と伸びをするような感じだろうか。このあたりがロリンズの語り口の上手さである。ガーランドが魅惑的なソロを取り、チェンバースがそれを短く引き継ぐと、小節交換が始まる。音色が異なるので聴き分けられる。テナー・バトルというような激しさではなく、リラックスして会話を楽しんでいるかのようだ。それでいてワクワクさせられる。お互いに敬意を抱いていたのだろうと想像する。それぞれの個性がよく出た名演だと思う。世評ではロリンズの勝ちということのようだが、そんなことはどうでもいい。勝ち負けなんて野暮じゃないか。
同じ楽器だったということもあって、公式に共演が記録されているのはこれのみなのだそうだ。

この曲ばかりが注目されてしまいほかが語られることは少ないのだが、これらがまた実に味がある。
02と05のスタンダード・バラードの語り口なんて本当に上手いと思うし、そのおおらかさというのがとても魅力的だ。
03のポールというのはチェンバースのことだろうか?
04の原曲はドビュッシーの『夢』。
しかし、このリズム隊は素晴らしい。さすがマイルスが全幅の信頼を置いただけのことはある。
ロリンズにはマックス・ローチのドラムがいちばん合うと思うのだが、フィリー・ジョーとの相性もいい。いつも煽り立てるように叩くフィリー・ジョーだがここでは少々おとなしい。ロリンズの歌心に合わせてということなのかもしれない。
泣く子も黙るリズム・セクションとの共演ということでロリンズも緊張したかもしれないが、そんなことは全く感じられないほどリラックスしたセッションになっている。アート・ペッパーのときもそうだが、この連中には人をリラックスさせ最上の演奏を引き出すマジックを使えたのかもしれない。

とにかくこの盤はコルトレーンとのバトルばかりが注目されがちなのだが、ロリンズのおおらかなプレイと押しと引きをわきまえたリズム隊の好演を聴くべきなのだ。そもそもコルトレーンの健闘も気心知れた仲間がいた安心感がもたらしたものだったのかもしれない。
なんにせよハードバップの名盤であることは間違いない。
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