先週末に注文していたCD19枚組のBOXセットが来た。
夏の断捨離大掃除でなるべく物を増やさないように決めたはずなのにこの有様である。まあ、人間の気質などそう簡単に変わるものではあるまい。
生活に必要なものだけを買っていたのでは景気は良くならない。無駄遣いをしてこそ景気回復に貢献できるのだ。
で、買ったのはジューダス・プリースト(Judas Priest)。
メタル・ゴッドとも呼ばれる英国のバンドである。
パンク&ニューウェイヴが盛り上がる少し前にメロディアスなハード・ロックをやるバンドとしてデビューした。ハード・ロックにとっては向かい風の時期である。その後『British Steel』というアルバムでへヴィ・メタルの基本フォーマットを提示し、以後メタル界の重鎮として君臨している。
レザー&スタッドというファッションを導入したのも彼らである。
確かに彼らの音楽はメタルなのだが、メロディアスなハード・ロックという雰囲気は常に失くさなかったように思う。80年代以降のファンはメタル・ゴッドとして、古くから知っている人は哀愁のハード・ロック・バンドとして捉えているのではないだろうか。
メタルがハード・ロックから派生したものであるということを示す生き証人とも言えるかもしれない。デビュー当時は二流だの時代遅れだのさんざん言われていたものだが、結果として時代のイノベイターとなった。
ジューダス・プリーストというケレン味たっぷりの名前も素敵だ。
アルバムを揃えるのは三度目になる。
今回のBOXはメタル・ゴッドそのものとも言えるヴォーカルのロブ・ハルフォード在籍時をほとんど網羅したものになっている。逆に言うと、ロブが離れていたリッパー・オーウェンズ在籍時の2枚のアルバムは除外されている。
アルバムどれもが歴史を作ったバンドらしい秀作ばかりだが、ハード・ロック時代の『Stained Class』、メタル黎明期の名盤『British Steel』、全盛期の充実作『Screaming For Vengeance』『Defenders Of The Faith』、ドラマーがスコット・トラヴィスに替わった凄絶な『Painkiller』あたりは必聴の名盤と言えるだろう。
ジューダス・プリーストのリズム・セクションは地味である。
メタル系はベースこそリズム・ギターとのユニゾンということも多いが、ドラムはたいてい派手である。そんなにバスドラを連打するなと言いたくなるようなものも多い。
しかし絶頂期のジューダス・プリーストのリズム隊は極めてシンプルである。絶頂期を支えたデイヴ・ホランドのドラムは精密機械のように正確ではあるものの手数は決して多くない。いや、むしろ少ない。イアン・ヒルのベースはメタル移行後は非常にシンプルなラインを弾いている。ロック界一の耐え忍ぶベースかもしれない。グレン・ティプトンとK.K.ダウニングの派手なツイン・ギターに比べると地味すぎる感は否めない。
ところがこれはこれで味があるのだ。
おそらく淡々とリズム・キープに徹することがこのバンドにとっては重要なことだったのだろう。華麗なギター・ワークと超絶ヴォーカルを乗せるには揺るぎのない堅牢なリズム・セクションでなければならなかったのだ。重量感には欠けるが、メカニカルな質感はメタル・サウンドによく似合っている。ことにエフェクターをかけたようなドラムの音がその印象を強くする。シンプルにリズム・キープに徹しつつも、ときおりハッとさせられるようなフィルインをかますので油断ならないドラマーである。
よりエクストリームな方向性を目指したとき、デイヴ・ホランドのスタイルとは相容れなくなり、ブラスト・ビートを得意とするスコット・トラヴィスを招いた、というのがドラマー交代劇の真相だろう。このドラマー交代によりイアン・ヒルのベースも変化する。そう考えるとかなりフレキシブルなベーシストなのかもしれない。少なくともジューダス・プリーストのグルーヴを生み出しているのは彼のベースであることは間違いない。まさに縁の下の力持ちと言えよう。
メタル・ゴッドと呼ばれることからメタル一筋のように捉えられがちだが、その音楽は幅広い範囲を網羅しているように思う。
それゆえメタルを好まなくても彼らの音楽は聴けるという人は少なくないのではないか。コンパクトにまとめつつ劇的に展開する楽曲はポップ化したプログレ(あるいはプログレ・ハード)に通じるものもある。メタル・ゴッドと奉る連中には叱られてしまいそうだが、彼らは決してメタルの権化ではなかったと思うのだ。
どう聴いてもいいのだと思う。それだけ懐の深い音楽なのだから。
そもそも『British Steel』自体が問題作であったわけだし、『Turbo』ではエレクトロニクスやギター・シンセを大胆に導入して物議を醸した。意外にチャレンジャブルだったのである。
何と言ってもジューダス・プリーストの看板はロブ・ハルフォードのヴォーカルである。
超絶ハイトーンとドスの効いた中低音。初めて聴いたときは衝撃的だった。それまで聴いたことのないタイプだったのだ。血管ブチ切れ唱法で、聴いているこちらまで血管が切れそうになる。意外なことにピーター・ハミルに似ているのだ。彼もアイアン・メイデンのブルース・ディキンソンのようにハミルの影響を受けたのかなあなんてことも思う。推測だけどね。
で、メタル界にはロブ・ハルフォード・タイプのヴォーカリストがたくさんいる。でも結局「ロブ・ハルフォードを髣髴とさせる」ということになって、彼の影から抜け出せないというのが実情のようだ。
それほどまでに彼の存在感は大きい。
とは言ってもジューダス・プリーストはロブ・ハルフォードのみのバンドではない。華麗なツイン・ギターのアンサンブルは見事だし、リフの組み立て方やさりげなくこなす変拍子など、ミュージシャンシップが高いのだ。ロック・ヒーローという印象ではないが腕のいい職人たちという感じだろうか。
ジャケットは左から『British Steel』、絶頂期の姉妹作のような『Screaming For Vengeance(復讐の叫び)』、『Defenders Of The Faith(背徳の掟)』。空中戦と地上戦、のようなジャケット。
BABYMETALのファンには是非メタルのルーツを知る意味でも聴いてほしいと思うのだが…。
長い歴史の中で咲いたベビメタが如何に特殊なものであるかがよくわかると思う。そしてキャッチーなメロディー・センスという点ではメタル・ゴッドとの距離は意外に近いということも。
では83年の『Defenders Of The Faith』冒頭に収録された『Freewheel Burning』の映像をどうぞ。
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