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2013年04月07日21:37

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日本語だと、旅

ジャーニーの旧譜が過去最高音質との触れ込みで再発された。
あの当時はジャーニーを好きだと言うのには気恥ずかしさがあったものだが、今なら堂々と言ってもよさそうだ。スティクスやTOTOやフォリナーやエイジアやREOスピードワゴンなんかと同じように、当時は産業ロックと揶揄されていた。
ロック・スピリッツを失った大衆に迎合した売るためだけのロック。
それが産業ロックの簡単な定義だ。

これにはニュー・ウェイヴことにオルタナティヴに注目させるために、オールド・ファッションドで批判精神や前衛性に乏しい連中を貶める目的でメディアが使い始めたという背景がある。
確かにその言い分には一理あるのだが、今になってみると、ロックの多様化のスピードにメディアが付いていけなかっただけなのではなかったかと思う。下手をすると「大衆はバカだ」という過激な展開になりかねなかったのだが、オルタナティヴの凋落とが意外に速かったというかあまり盛り上がらなかったことで大ごとにはならなかった。

ジャーニーの音楽は狭義ではロックではないのだろう。
だったらロックでなくてもいいじゃないか、と思った瞬間に楽になった。
別にジャーニーは偉そうなことを言うわけではなく、ただメロディアスで技巧的な優れた音楽を作っていただけではないか。
「俺たちはロックだ!」と声高に喚くヤツがいるから、「それは違うだろう」と言いたくなるのだ。

今なら彼らの音楽もロックの一分野とみなすことができる。
ひたすら楽曲と技巧にこだわった大衆にアピールしやすい音楽というのは当時としては「新しい試み」だったと思うのだ。80年代以降、その路線を踏襲した連中とは根性と覚悟の入り方が違う。その功罪併せて時代のイノベーターだったのだ。

さて、ジャーニーといえば70年代後半から80年代前半までが黄金期である。
驚異的なハイトーン・ヴォーカリストのスティーヴ・ペリーを擁していて、メンバー的にもほぼ安定していた時期である。アルバムで言えば、『インフィニティ』『エヴォルーション』『ディパーチャー』『エスケイプ』『フロンティアーズ』である。
中でも『エスケイプ』が爆発的にヒットした。なんだかんだ言いつつよく聴いたよ。今でも全ての曲を口ずさめるくらいに。中でもベタベタなバラード『オープン・アームズ』のクサさは特筆に価する。美メロ劇的バラードの典型だが、これはやはりスティーヴ・ペリーの超絶な歌唱があってのものだったなと思う。名曲ゆえにいろいろカバーされているが、成功しているのはスピリチュアルに歌い上げて違った魅力を引き出したマライア・キャリーくらいだろう。

思い入れがあるのはスティーヴ加入後の最初のアルバム『インフィニティ』だ(写真左)。
スペイシーなインストゥルメンタル中心のバンドから、歌ものへドラスティックに路線変更を試みた作品である。この中でいちばん好きなのが『ウィンズ・オブ・マーチ』という涙腺刺激系のバラード。ジャーニーの曲で1曲を選ぶとしたら、これかもしれない。中間のインスト部分(ことにオルガン)がプログレっぽくてね。この曲を好む人は多いと思うのだが、ベスト盤には収録されない裏名曲という位置付けに留まっている。たしかにベスト盤常連組の『ライツ』『ペイシェントリー』『ホイール・イン・ザ・スカイ』があっては仕方ないかという気もする。
そのくらい名曲揃いなのだ。
ただひとつ不満があるとすれば、ドラマーがスティーヴ・スミスではないこと。エインズレー・ダンバーも名手なのだが、ここでは明らかに方向性がずれてしまっている。サウンド・プロダクションもドラムの音を加工しすぎ。
ドラマーが交代した、続く『エヴォルーション』もほぼ同じ路線。
『ディパーチャー』(写真中央)になると、よりカラッとした音作りで、プログレっぽさはすっかり影を潜めてしまった。この後に映画のサントラ『夢、夢のあと』の制作後、キーボードのグレッグ・ローリーが円満に脱退。ちなみにサントラのほとんどがインスト曲だが『リトル・ガール』はジャーニーらしい劇的バラード。これは今『ディパーチャー』のボーナス・トラックとして収められている。
新規蒔き直しを図ったジャーニーが『インフィニティ』で目指した路線の完成形が『エスケイプ』(写真右)である。新たにジョナサン・ケインをキーボードに迎え、彼の明るい音色が時代に合っていた。80年代前半を代表する名盤。硬派なロック・ファンからは散々非難されたアルバムだが、これほどレベルの高いアルバムをどれだけのバンドが作れたと言うのだ。
このアルバムだけは曲順通りにしか聴けない。曲が終わるとすぐに次の曲のイントロが浮かんできてしまうからだ。
シングル・カットされなかったが『マザー・ファーザー』というのがいい曲でね。歌詞は意味わかんないけど、超絶ヴォーカルがカタルシスをもたらす逸品。
『フロンティアーズ』になるとスティーヴの声が若干不調気味なのが気になる。それでも冒頭の『セパレイト・ウェイズ』はカッコいい。これなんかも散々叩かれそうな曲だが、カッコいいものはカッコいいのだ。それもあざといくらいに。

私にとってジャーニーはここまで。
リズム・セクションが抜け、三人体制となった『レイズド・オン・レイディオ』はリアル・タイムで聴いたときにはピンと来なかった。完全にAOR化した、と全く興味を持てなかった。
そして、解散。
90年代半ばに黄金期のメンバーで復活。『トライバル・バイ・ファイアー』をリリース。往年のジャーニーらしい名作との評判もあるが、通して聴いたことはない。
この再結成も長くは続かなかった。
今回この2枚も再発されている。しかし、買ってはいない。
今ならば冷静に聴くことができるかもしれない、とも思う。

ベタでクサい曲をカッコよく聴かせることができたのがジャーニーというバンド。
これはもう立派な個性でしょ。
ニール・ショーンもギター・ソロではえらくカッコいい情緒的なフレーズを繰り出している。
ロス・ヴァロリーとスティーヴ・スミスのリズム隊も味がある。
そうは言っても、やはりスティーヴ・ペリーのヴォーカルだろう。彼の声はカタルシスだな。
現在もジャーニーは現役として活動している。90年代の再結成時に参加して以来スティーヴは不在である。ヴォーカルを替えて活動を続けているという事実だけでも称賛に値する。しかし、スティーヴのいないジャーニーははたしてジャーニーなのか?
それはそれぞれが判断すればいいことだが、確実に言えるのは誰もスティーヴの代わりはできないということだ。いくら似た声のヴォーカルを連れてきても、無理なのだ。それを曖昧な言葉で言えば、スティーヴの持つ「Somethin' else」ということになるのだろう。
最近のジャーニーの熱心な聴き手ではないので偉そうなことは言えないが、むしろタイプの違うヴォーカルを連れてくればいいのではないか、という気がする。レパートリーはかなり制限されてしまうだろうが。

まあ、なにはともあれ、黄金期のアルバムは人類の至宝だよ。
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