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2012年10月14日22:30

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優しい巨人

ジェントル・ジャイアント(Gentle Giant)というバンドをご存じだろうか。
英国プログレを代表するバンドでありながら、日本での知名度は低い。そう言うと、ヴァン・ダー・グラーフ・ジェネレイターと同じではないかということになるが、ヨーロッパでは絶大な人気を誇るというあたりは似ている。孤高であることも相通じる。ただし、音楽性は全く異なるのだが。
1981年に解散して以来、再結成はしていない。

ロック界随一の技巧派集団として知られている。
高度な技巧を誇ったイエスを凌駕するとさえ言われていた。
超絶変拍子に頻繁な楽器の持ち替え、トラッドや古楽のエッセンス、めまぐるしい曲展開、などワン・アンド・オンリーの音楽を築き上げていた。彼らの凄いところは、こういう音楽だとチマチマと小ぢんまりしたものになりがちなのだが、そこを豪快なロック・ビートに乗せてしまったことだ。それゆえプログレ系バンドの中では恐ろしくポップでノリがいい。しかしその実態は複雑怪奇という代物だった。
さらに、一般的にプログレのイメージとして持たれることの多い幻想味や神秘性とは無縁だったのもおもしろい。それゆえ日本では人気が出なかったとも言えるのかもしれない。結果論だが、その軽妙さが軽んじられてしまったということなのだろう。

確かにとっつきやすい音楽とは言えない。
プログレとしても、ハード・ロックとしても、ポップスとしても、どう捉えたとしても異型なのだ。カラッとした明るさも英国産としては異質である。
私も最初は捉えどころのないバンドだなあと思っていた。
しかし、突然わかってしまうのだ。喉に引っ掛かった小骨が取れるかのように。
そうなるとアクロバティックな音楽が極めて心地いいものに思えてくる。

マスコットの巨人の顔もとぼけた感じで良い。ちょっと不気味ではあるが…。

オリジナル・アルバムは11枚。それにオフィシャル・ライヴが1枚。
1st『Gentle Giant』(写真左)、2nd『Acquiring The Taste』、3rd『Three Friends』(写真中央)、4th『Octopus』、5th『In A Glass House』、6th『The Power And The Glory』、7th『Free Hand』(写真右)、8th『Interview』とライヴ盤『Playing The Fool』は掛け値なしの名盤。彼らのマジックに翻弄される。
どれか1枚ということであれば7th『Free Hand』だろうか。ひねくれ音楽の集大成だ。
複雑怪奇な曲を見事に再現してしまう演奏能力を見せ付けるライヴ盤も必聴だ。さすが技巧派集団、隙がなくしかも豪快な演奏にはただただ驚くのみ。
9th『The Missing Piece』はポップ化が加速した感はあるが、これも彼ららしい名作と言える。
10th『Giant For A Day』と11th『Civilian』は変拍子と複雑な構成が影を潜め、シンプルなハード・ロックになっている。それでもひねくれ感覚は健在で、彼らの矜持をそこに見ることができる。今聴くと、仕上がりとしては決して悪いものではなく、プログレ・バンドがパンクやニューウェイヴを取り入れるとどうなるか、という点では野心作だと思う。受けなかったのは時代のせいかもしれない。時流に対して敏感だったことが仇となった感じだ。あと数年踏ん張っていれば、その先見性が評価され、バンドはずっと長く継続できていたかもしれない。

日本では考えられないくらいビッグ・ネームである。
後世に与えた影響も大きい。
ひねくれポップの代表格XTCなんかは間違いなく影響を受けているだろう。

まあ、プログレ好きを公言するなら、好き嫌いはともかくジェントル・ジャイアントとVDGGくらいまでは聴いておいて欲しいものだと思う。彼らを知らずしてプログレを語ろうなんてチャンチャラおかしいぜ、などと過激なことを言ってみたくなる。
もっとも、今の時代にプログレを語ろうなんて奇特なヤツはそうそういないとは思うが。

ちなみに、キング・クリムゾンとイエスとEL&Pをプログレ御三家と呼ぶことがある。それに対して、ジェネシス(もちろん70年代限定)とヴァン・ダー・グラーフ・ジェネレイターとこのジェントル・ジャイアントを裏御三家と呼ぶ。
私としてはEL&Pを外して、ピンク・フロイドとジェスロ・タルを加えて、プログレ七賢人としたい。さらにルネッサンスを加えると、プログレ末広がり。
まあ、なんにせよことごとく音楽性が違うというのがおもしろい。あの当時すでにロックは多様な表現を手に入れていたということになる。
そんな中でもジェントル・ジャイアントは一際ユニークだったと思うのだ。
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