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2012年09月18日23:39

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上野由恵@オペラシティ・リサイタルホール

今日はオペラシティの名物リサイタル「B→C」だった。
バッハ(Bach)から現代(Contemporary)へ、というわけで「B to C」と題されたシリーズ。新進の音楽家にとってはこのリサイタルへの出演が一種のステイタスとも言える。聴く側にとっても「B→C」出演実績はわけわからんコンクールの入賞歴よりもよっぽど信用できる。
バッハと現代作品を組み込むという条件さえ満たせば、好きにプログラムを組めるのだが、先日の三浦友理枝嬢の話で、プログラムやコンセプトには審査があることが判明した。
奏者にとってチャレンジャブルであり、またそのときの本音で勝負できるリサイタルと言えよう。

今回はフルート奏者の上野由恵嬢。
オール無伴奏のプログラムを組んできた。

01.マレ:スペインのフォリア
02.イベール:小品
03.三宅悠太:東京空ノ下(2012、上野由恵委嘱作品、世界初演)
04.カルク=エーレルト:30のカプリッチョ − グラドゥス・アド・パルナッスム 作品107から、
  シャコンヌ
<休憩>
05.バッハ:無伴奏フルートのためのパルティータ イ短調 BWV1013
06.細川俊夫:線�機�1984/86)
07.クーラウ:フルート・ソロのための3つのファンタジーから、第3番 ハ長調 作品38-3
<アンコール>
08.ドビュッシー:シリンクス
09.バッハ:無伴奏チェロ組曲第3番より、ブーレ

マラン・マレのフォリアは無伴奏フルートの定番曲のようになっている。もちろん原曲はガンバである。
有名なフォリアのテーマによる変奏曲。
美しい音色と完璧な技巧に魅了される。変奏ごとの性格付けも見事だ。この1曲でホールを上野由恵の世界に変貌させる。

フルートの名曲にはフランスものが多い。イベールの作品もそんな1曲。
タイトルもないという素っ気なさだが、イベールらしく映像を喚起させる曲である。
天真爛漫で自由闊達な演奏。こうした明るさも彼女の魅力である。

このリサイタル、委嘱作品の初演を聴けることも多い。
今回は三宅悠太氏の新作。特殊奏法も交えた野心作。いい意味での雑多な音響。その中のノスタルジー。なるほど、東京か、という気がする。楽しめた。

カルク=エーレルトという名前は聞いたことがあるような気がするが、記憶は曖昧。
ドビュッシーやスクリャービンやシェーンベルクの影響を受けたそうだが、自身の音楽は調性音楽に留まっているようだ。それでもやはり時代の変わり目の音がしないでもない。バッハのシャコンヌと先のフォリアを合わせたような曲、と言っては失礼だろうか。

休憩を挟んでバッハ。
フルート奏者にとって「B→C」は有利とも言える。バッハにはフルート用の名曲があるからだ。
中でも無伴奏パルティータは古今のフルート独奏曲の中でも極めつけの名曲。重音の出せない旋律楽器でポリフォニーを表現するバッハの腕の冴えはさすがである。
凛とした音色のもたらす緊張感が心地よい。冒頭のアルマンドから異常にテンションが高い。クーラントではさらに熱気を増し、メロディーの美しさに全てを委ねたサラバンドにも張り詰めた緊迫感がある。そして高速ブーレでのカタルシス。自在な技巧と圧倒的な表現力が素晴らしい。中音域の美しさは筆舌に尽くし難い。
そして、彼女のバッハ演奏の向こうにはモダンな響きが聴こえる。
確かにバッハから現代へはつながっているのだなあ、と感じた瞬間でもあった。

『線�機戮眥阿�ものだった。フルート用の日本の現代曲としては知られている方だろう。12分以上を要する大曲である。
バッハではなく、むしろこちらがクライマックスだったか。
おそらく8割以上が特殊奏法。声も使う。よってこれは視覚的にも音響的にも前の席の方が絶対に楽しめる。というわけで、最前列は大正解。
彼女の現代曲の演奏は非常に聴きやすい。演奏に引き込む力がある。つまり、自己満足の演奏ではなく、聴かせることを意識した演奏なのだ。取っつきにくい現代音楽が上野由恵というフィルターを通してわかりやすくなっているという印象だ。すでに難曲を汲々と演奏しているというふうではない。作品に寄り添いつつも、そこに聴かれるのは紛れもなく上野由恵の音楽なのだ。
だからこそ追いかけ甲斐がある。

最後に置かれたクーラウの作品はエピローグのような感じか。
バッハ、細川と続いた後ではいささか軽い感は否めないが、それゆえに後味スッキリというふうに思っていた。それでも演奏が進むに従って熱を帯びてくる。結局聴き応えのある演奏だったということになる。
それと感じさせない超絶技巧がさすがだ。

アンコールは予想が外れた。。。
イサン・ユンのエチュード第5番だと思っていたのだが…。得意の作品を本編からもアンコールからも外したあたりに彼女の演奏家としての志の高さを感じた。

昨年の夏、絶対に聴きに行かなければならないコンサートのような気がして、初めて出かけて以来、この若手フルート奏者に魅了され続けている。
今回の「B→C」も忘れえぬリサイタルとなった。今後の飛躍を確信するとともに、彼女と出会えた幸運を感じた夜になった。

終演後は疲れを見せずにサインに応じていた。
真摯な態度と明るいキャラも魅力。

あ、最後に宣伝。。。

上野由恵さんのコミュニティを立ち上げています。
ご興味のある方は是非ご参加ください。

http://mixi.jp/view_community.pl?id=6055386
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