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2012年03月28日23:21

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三浦友理枝@東京文化会館 小ホール

ずいぶん久しぶりである。
いや、三浦友理枝嬢のピアノはよく聴いている。今年もすでに2月に例のトリオで聴いている。
では何が久しぶりかというと、フルサイズのソロ・リサイタルが、である。
室内楽にコンチェルトに活躍の場は多かったが、やはりじっくりと彼女のピアノを聴きたいと思うのは当然のことだろう。
そして、このホールで彼女のピアノを聴くのも久しぶりである。ちょうど3年前か。もうそんなになるのだな、と思う。
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1106364899&owner_id=3696995

演奏家と聴き手の間にもそれなりの歴史ができるということか。

さて、今夜のプログラムは「夜」をテーマにしたフランスもの。
彼女らしい芯の通ったコンセプトに超絶技巧曲を乗せてきた。

01.ドビュッシー:音と香りは夕暮れの大気にただよう(前奏曲第1巻より)
02.ドビュッシー:月の光(ベルガマスク組曲より)
03.フォーレ:ノクターン第13番 ロ短調 作品119
04.プーランク:ナゼルの夜会
<休憩>
05.メシアン:モリヒバリ(『鳥のカタログ』より)
06.ラヴェル:夜のガスパール
07.ラヴェル:道化師の朝の歌(『鏡』より)
<アンコール>
08.ドビュッシー:レントよりおそく
09.プーランク:プレスト
10.ドビュッシー:夢

夕暮れから夜を経て明け方へ、という時間経過を辿ったプログラムである。上手いこと組むなあ、と思う。

挨拶代わりのドビュッシー。
彼女の『月の光』は冴え冴えとした空気感が緊張感をもたらす。

フォーレは私の大好きな作曲家だ。そのフォーレの最後のピアノ曲。
私は彼女を優れたフォーレ弾きだと思う。微妙な情感の揺らめきを掬い取るのが上手いのだ。
そもそも上手く弾くこと自体が難しい曲。この曲に限らずフォーレのピアノ曲には決定的な名盤というものがない。彼女がそれを作れる可能性は十分にあると私は思っている。

プーランクの『ナゼルの夜会』はライヴで聴くのは初めてだ。
パーティーに来た人々の性格を描写した変奏曲。しかし、一筋縄ではいかないのがプーランク。美しいメロディーがあるかと思えば、グロテスクっぽいところもある。プーランク流のユーモアなのか。
もう少し遊び心があってもいいと思うが、楽しく聴けた。アップテンポの曲での歯切れのいいタッチが小気味いい。

メシアンの大作『鳥のカタログ』を彼女の演奏で聴くのは2曲目。
どんなに乱暴に聴いたとしても、えらく難しい曲だということはわかる。そんな曲集である。
メロディやハーモニーやリズムといった要素から完全に解き放たれた曲。大好きな曲集だ。それを大好きなピアニストの演奏で聴けるのだから至福の時である。

さて、これまでで聴き応え十分なのだが、実は目玉は『夜のガスパール』である。
ラヴェルのピアノ曲の最高峰であるだけでなく、20世紀ピアノ曲の最高傑作と言っても良いと思う。しかも最高難度の技巧を要求される曲でもある。
私はずっと彼女がこの曲を弾くのを楽しみにしていた。間違いなく彼女に合うと確信していたからだ。
『水の精』『絞首台』『スカルボ』という不気味な雰囲気の3曲。ラヴェルには珍しく表現主義的な曲である。
1曲目の『水の精』からして素晴らしい。彼女のクリスタルのような硬質な美音が生きる。きらめくような水の表現。彼女が『水の戯れ』を得意としていたことを思い出す。
2曲目の『絞首台』はぐっと抑えた表現。暗く重い足取りに緊張感が漲っている。
超絶技巧が要求される『スカルボ』こそ彼女が最も得意とするものであろう。音の分解能が高い。これだけの曲をむしろ彼女は余裕を持って弾いているようにすら見える。人によっては美しすぎる『スカルボ』だと言うかもしれない。確かにそうかもしれない。しかし、それが彼女の個性なのだと思う。強い打鍵の低音が効果的。彼女はどんなに強く鍵盤を叩こうと音が濁らない。
名演だったと思う。鳥肌が立ったよ。
フランソワのように自在に曲を動かすような演奏とは違う。硬い印象だというのは確かある。しかし、その多くは彼女の硬質で寒色系のピアノの音によるものなのだと思う。だとすれば、それは三浦友理枝の『夜のガスパール』だという主張のある演奏だということなのだ。

深夜の百鬼夜行を経て、クールダウンのように置かれた『道化師の朝の歌』。
一転して柔らかな雰囲気。きらびやかな音が夜明けの新鮮な雰囲気を醸し出す。

アンコールはやはりフランスものを3曲。プーランクのプレストが珍しい選曲か。

演奏を終えた彼女を見ると、ホントに小柄で華奢である。手だって小さい。
可憐な容姿からはあんな凄みのあるピアノを弾くとは想像がつかない。
そのギャップがいい。
われわれにとって今もっとも優先して取るべきチケットは彼女が絡んだコンサートである。
とにかく彼女はワクワクさせてくれるのだ。ユニークなプログラミングと、なによりもその素晴らしい演奏によって。

8/25のフィリア・ホールのリサイタルでは全く異なるプログラムにするという。
まったく、彼女はわれわれがフィリアに来るということを前提に話をしているな!
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