今日はオペラシティ恒例の「B→C」シリーズ。
Bはバッハ、Cはコンテンポラリー、ということで、バッハと現代曲がプログラミングされていればあとは好きなように選曲できるというリサイタル。これに出場できるということは若手にとってひとつのステイタスである。と同時に聴く方にとっても非常におもしろい。たいていの演奏者が気合の入ったプログラムを組んでくるからだ。
さて、今回はファゴットの黒木綾子。東京フィルの首席奏者である。
もう何年前になるのか、ヴィラ=ロボスのブラジル風バッハ全曲演奏会で6番(フルートとファゴットのデュオ)で演奏していて、感心したことを覚えている。
最近は女性のファゴット奏者が多くなったなあと思う。
木管グループの低音を担うから、大きな楽器である。地味で鈍重な印象を持たれがちだが、ファゴットがしっかりしないとオーケストラが締まらないのも確か。女性奏者が多くなったことで注目度も高くなりつつある。かな?
なんにせよ、ファゴットのリサイタルということ自体がまだ珍しい。
共演者はムン・ジョンジェ(ピアノ)。
プログラムを見ても知っている曲はバッハしかないなあ。。。
(*はピアノとのデュオ)
01.ドヴィエンヌ:ファゴット・ソナタ第5番 ト短調 *
02.バッハ:パルティータ ニ短調
(原曲:無伴奏フルートのためのパルティータ イ短調 BWV1013)
03.ウェーバー:アンダンテとハンガリー風ロンド *
<休憩>
04.フランセ:2つの小品 *
05.プレヴィン:ファゴット・ソナタ *
06.藤倉大:Calling(日本初演)
(黒木綾子、インターナショナル・コンテンポラリー・アンサンブル 共同委嘱)
07.ヴィラ=ロボス:7つの音のシランダ *
<アンコール>
08.ラヴェル:ハバネラ形式の小品
09.ふるさと(唱歌)
ドヴィエンヌのソナタは優雅でいい曲。ファゴットのアーシーな音色が生きた曲だ。
いちばんのお目当てはこれ。
バッハのパルティータ。
ファゴットでやるかあ、と驚いた。このリサイタルの後では、ファゴットという楽器のポテンシャルを知らなかったんだなあと思う。
見事でした。しかし、大変だなあ、とも思う。この曲はブレスのタイミングで印象が大きく変わる。聴き慣れたものとはブレスの入れ方に違いがあった。ファゴットならでは、ということかもしれない。演奏時間も長めだったように思う。もしかしたら、今日の曲の中でこれがいちばんチャレンジャブルだった? クーラントやブーレのような速い楽章は超絶難曲なのだろうなと思う。
それにしてもバッハのポリフォニーというのは凄いな、と再認識。
今日の収穫、ウェーバーの曲が良かった。
特に前半のアンダンテが美しい。ファゴットってこんなにいい音だったんだ、と夢見心地な気分。
フランセの小品は小洒落た雰囲気。プーランクっぽい感じもする。
ファゴットっていろいろな表情が出せるんだなあ。
プレヴィンとはあの名指揮者のアンドレ・プレヴィン。彼がファゴット・ソナタなんて書いているなんて知らなかった。ジャズっぽいようでジャズではない。メロディーがあるようでないような…。いろいろな要素のミクスチャーなのだろう。いい曲とは思うが、ちょっと期待しすぎちゃったかな。
藤倉大という作曲家は旬なのだろうか。最近この人の名前をよく聞く。
曲としてはどうなのか…。う〜ん。
ファゴットの特殊奏法が聴けて楽しかったが…。
ヴィラ=ロボスの曲はいい曲だ。彼のおおらかさを感じると同時にメロディアスでもある。
ブラジル風バッハの6番もそうだが、ファゴットという楽器を熟知しているというふうに感じる。
メロディーの歌い回しも上手く、いい演奏だった。
彼女はラヴェルがいちばん好きな作曲家なのだという。
ということでアンコールはラヴェル。
ファゴットって意外にフランスものが合うんだなあ。
もう1曲『ふるさと』は震災後1年、という理由もあったようだ。
暖かい音で切々と紡がれるメロディーは感動的だった。
ファゴットのリサイタルが珍しいからというだけでなく、とても楽しめた。
もっと現代音楽っぽい曲があっても良かったかな、とも思うが、それは贅沢すぎかもしれない。
奏者が何を聴いてほしいか、そういったものが伝わるリサイタルだった。
たぬ〜はファゴットの音を「体に優しい音」と言っていた。
なかなか上手いことを言う。
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