マーラーの交響曲第3番、実際のコンサートで演奏されることは少ない部類に入る。
それもそうだ。この交響曲、効率がよくない。
まず、演奏時間が100分ほどかかる。第1楽章だけで35分くらいだから、まずこれで通常の交響曲の1曲ぶんである。
全6楽章のうち、第4楽章と第5楽章にアルト独唱が入る。合わせて15分ほど。
第5楽章には女声合唱と児童合唱が入るが、僅か5分ほど。100分のうちの5分である。
しかもポストホルンなんていう珍しい楽器も必要である。しかも舞台裏…。
長いし、編成も経済的ではない。まあ、プログラムに乗せにくいのはよくわかる。
ただでさえ長いマーラーのシンフォニーの中で最長を誇る、というのも人気の出ない大きな原因だろう。
私は大好きだが。
これはマーラーがありとあらゆるものを詰め込んだシンフォニーである。詰め込みすぎて溢れてしまったものは次作の4番に回した、というくらい様々な要素が詰まっている。それゆえとらえどころのない感じは否めないが、楽想の豊かさでは随一だろう。特に長大なアダージョの終楽章の美しさはこの世のものとは思えない。
前ふりが長くなったが、今日はサントリー・ホールでこの曲を聴いてきた。
ピエタリ・インキネン指揮の日本フィルの「マーラー撰集」プロジェクトの2回目である。
実は本来今回は3回目のはずだった。4月に6番が組まれていたのだが、震災の影響でお国からインキネンが渡航自粛を求められ、中止となってしまったというわけ。
それで今回が2回目。振るはずだった6番もいずれプログラミングし直して欲しいと思うが…。
通常はフィンランド出身のインキネンらしくシベリウスのあまり知られていない曲がカップリングされるのだが、今回はさすがにマーラーのみ。
マーラー:交響曲第3番 ニ短調
ピエタリ・インキネン指揮、日本フィルハーモニー交響楽団
アンネリー・ペーボ(Ms)
栗友会合唱団
杉並児童合唱団
1回目の『巨人』のときには弦の鳴らし方が上手く、全体的に表現の振幅の大きな演奏だったという記憶がある。今回もその印象は変わらなかった。自身ヴァイオリニストとしても活動しているだけあって、弦に対しては一家言あるのだろう。微に入り細を穿つという指揮ぶりではないようで、大筋を付けて奏者の自主性に任せるというふうだったように見える。結果奏でられる音楽は極めて流麗で自然である。表現の振幅の大きさも恣意的な感じがしない。
長大な第1楽章はもともと場面転換が激しいので飽きないのだが、うまくオーケストラをドライブしていたように思う。金管も好調で、奏者にとってもインキネンはやりやすい指揮者なのかもしれないという気がした。冒頭の8本のホルンの斉奏はホールで聴くと迫力が違う。
続く第2楽章は草花のそよぐような可憐な音楽。一編の交響詩のような趣。こういうさりげない音楽をさりげなく聴かせるのは結構難しいと思う。身振りが大仰になっては台無しだ。なかなかいい感じだったと思う。
スケルツォに相当する第3楽章。これは楽しい。インキネンの棒に対し、オケも機敏な反応を見せる。ポストホルンの抒情的なソロも十分聴かせてくれるものだった。たぬ〜はポストホルンがどこにいるのか探してしまったそうだ。
第4楽章にはアルトの独唱が入る。ニーチェのツァラトゥストラからテキストが取られた瞑想的な音楽。初めて聴くアルト(実際はメゾ)だが、声に張りがあっていいね。美人だし。大柄だけど。
第5楽章はさらに女声合唱と児童合唱が加わる。5分のためにもったいなあと思うのは貧乏性だからだろうか。しかも児童合唱はほとんど「ビム・バム」と鐘の音を模倣するだけである。
さて、いよいよクライマックスの終楽章。マーラーのアダージョ。世界で最も美しい音楽に分類されるべきものだと思う。まさに弦は咽び泣くようだった。インキネンの指揮は思い入れたっぷりで、この楽章こそが3番の中心と確信しているかのようなアプローチだったと思う。「弦を鳴らすのが上手いインキネン」という印象から期待していたのだが間違ってはいなかった。木管も健闘していたし、最後の聴きどころでもある金管の弱奏によるコラール的な部分も感動的だった(ちょっとトランペットがズッコケたのが残念だが…)。結構速いテンポかなと思っていたのだが、23分くらいかかっていたから決して速いということはなかったようだ。
総じて満足の行く演奏だった。だからもう細かいことは言うまい。
ひとこと苦言を呈するなら、4楽章以降金管がやや乱れ気味だったか。
緊密な構成を持っているとは言い難いこの曲を弛緩させることなく指揮しただけでもすごいと思うし、それに集中力を持って応えたオケも見事だった。
きっとインキネンは3番が大好きなのだろう。そんなふうな指揮ぶりだった。
イケメンっぽいけど、いいヤツじゃないか。
そういえば、前回の『巨人』がライヴCDになっていた。今日リリースだったらしい。
聴いていたコンサートがCDとして記録に残るというのはなんか嬉しい。
もちろんゲットしてサインをいただいてきた。
さて、次回は来年の4月。今度は5番である。
カップリングはシベリウスの組曲『クオレマ』。あの『悲しきワルツ』が入っている曲だね。
ログインしてコメントを確認・投稿する