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2011年06月02日23:07

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脱獄したサギ師ジョニー?

シン・リジィ(Thin Lizzy)というバンドをご存じだろうか。
70年代後半に英国を中心に活動したハード・ロック・バンドである。
サウンドのウリはツイン・リード・ギター。ウィッシュボーン・アッシュからの影響もあるのだろうが、メロディックでハード・ドライヴィングなギター・サウンドは後世に大きな意影響を与えた。
ブリティッシュ・ハードとはどこか一線を画していたのは出自がアイルランドということが大きいのだろう。アイリッシュ・トラッド的な要素(音楽面でも歌詞世界でも)を持った曲を多く書いている。

ブライアン・ロバートソン(g)、スコット・ゴーハム(g)、フィル・ライノット(b,vo)、ブライアン・ダウニー(dr)というのが全盛期のメンバー。ブライアン・ロバートソン脱退を受けて加入したのが先日亡くなってしまったゲイリー・ムーア。

中心人物のフィル・ライノット(昔はリノットという表記で、その方が馴染み深い)は親分肌の人物だったらしい。音楽の才能にも詩作の才能にも秀でていたが、ドラッグに溺れ文字通り身を滅ぼしてしまう。今年は没後25年にあたる。

全盛期のアルバムの邦題『脱獄』『サギ師ジョニー』『悪名』を並べてみると、どんだけワルなバンドなんだと思ってしまう。
ロック本来の表現衝動を持った音楽なのは確かだ。時代背景もあったのだろう、閉塞的な社会に対する批判精神が生きていたと言える。方法論は違えど、その時代のパンクに通じる部分もある。もっとも飽くまでも精神的な部分であって、音楽的には技巧的で旋律的である。
オールドウェイヴなようでそうでもない、という感触だったように思う。
不思議なものでシン・リジィの音楽は年を重ねれば重ねるほどよく聴こえる。あの当時からすでに「大人のロック」だったのかもしれない。

ブライアン・ダウニーはあまりにも過小評価されすぎているドラマーだ。正確なタイム感覚に則ったうえでの流れるようなスティックさばき。ハード・ロック系のドラマーとしては相当な技巧派である。非常にセンシティヴなドラミングで、シン・リジィが単にハード・ロック・バンドとは言い切れない懐の深さを感じさせるのは彼の存在が大きいと思う。
フィル・ライノットとともにアイルランド時代から最後までバンドを支えた苦労人である。
大好きなドラマーだ。私にとってシン・リジィを聴くということは、彼のドラミングを聴くということでもある。

先日彼らのアルバム3枚がデラックス・エディションとしてSHM-CDで再発されたのだ。
『脱獄』『サギ師ジョニー』と名ライヴ盤として名高い『ライヴ・アンド・デンジャラス』である。今後ほかのアルバムもリリースされる予定らしい。
ブリティッシュ勢も真っ青のハード・ドライヴィングな曲もあれば、アイリッシュの香り漂う格調のある曲もあるし、ちょっとのんびりしたような曲があるかと思えば、美旋律バラードも飛び出すという、バラエティに富んだ内容になっている。
やはりツイン・リードは聴きものだ。
フィル・ライノットのヴォーカルも巧みである。

やはりあの時代のバンドには味がある。
ロックがロックらしかった時代。シン・リジィもそんな時代を生き抜いたバンドだった。
パンクやニューウェイヴの台頭がもっと遅かったなら、名バンドとして多くの栄誉を手に入れられたかもしれない。しかし、彼らが残した音楽は今も色褪せることはない。

写真は左から『脱獄』(まるでアメリカン・コミックのようなジャケットだ…)、『サギ師ジョニー』(三方の模様はケルト系の柄だと思う)、『ライヴ・アンド・デンジャラス』(写っているのはフィル・ライノット)。
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