わけわからん邦題だ。
違心伝新………? なんだそりゃ?
ピンク・フロイドの『原子心母』よりわけわからん。こちらは『Atom Heart Mother』という原題をそのまま漢字に置き換えただけだから、仕方ないかもしれない(安直とも言う)。しかし『違心伝新』の方の原題は『A Grounding In Numbers』なのだから、まったくもってわからない…。
まあ、それはいいか…。
英国プログレッシヴ・ロックの奥座敷とも言えるヴァン・ダー・グラフ・ジェネレイター(Van Der Graaf Generator、以下VDGG)の最新アルバムである。
私が最も愛するバンドである。
ヨーロッパでは絶大な人気を誇るが、日本での知名度は著しく低い。海外では大物バンドだが、日本ではマニア御用達のような位置付けだ。
活動していたのは60年代末から70年代中盤まで。しかもその間に解散時期があるので、実働期間は極めて短いということになる。
全盛期のメンバーと主な担当楽器は以下の通り。
ピーター・ハミル:ヴォーカル、ギター、ピアノ
デヴィッド・ジャクソン:サックス、フルート
ヒュー・バントン:オルガン、ベース
ガイ・エヴァンス:ドラムス
専任のギタリストが不在、さらにベースはキーボード奏者がオルガンのペダルで代用するという、非常にユニークな編成である。
2005年に全盛期のメンバーで驚きの再結成を果たし、まさかのアルバムまで作成した。その後、デヴィッド・ジャクソンの脱退という悲しい出来事はあったものの、トリオ編成で活動を続けている。2008年にはバンドとして初めての来日を果たし、再結成後のアルバムも今作で3枚目になる。
同窓会気分の再結成とはわけが違う。懐古趣味とはほど遠い。昔の名前で出ていますなんてとんでもない。
そこで聴かれるものはまさしくロックだった。
老成することのないロック魂には頭が下がるのみだ。
ピーター・ハミルという人は慟哭の詩人としてカリスマ的な存在である。彼のヴォーカル(さらにギターやピアノ)はときとして音楽としての枠組みを逸脱してしまう。そんな彼を音楽の枠組みにとどめ、内省的な歌詞世界に音楽的裏付けを与えるのがVDGGという特異なユニットなのだと思う。
美しいメロディーがあるかと思えば、いきなり混沌した世界が広がる。
変拍子ロックでもある。
批判的精神に満ちていた点ではパンクの精神を先取りしていたとも言える。
それらは今でも変わらない。
今作は長尺の曲がなくなり、それまでとやや質感を異にする。激しさよりも静けさを感じるアルバムだと思う。VDGGらしからぬ曲も含まれていて、アルバム全体がひとつの組曲のような印象を受ける。
やはりすごいバンドだ。
ちなみに、ヒュー・バントンのオルガンはロック系の音色やスタイルとは大きく異なる。教会でパイプ・オルガンを弾いていたという経歴があるためか、そうした教会オルガン的な雰囲気が色濃く出ている。こういうオルガンを弾く人はほかにいないだろうと思う。マルチ・キーボード奏者ではないが、そのオルガンのみで唯一無二の個性を誇る。さらに言うなら、ベース・パートをペダルで演奏するので、地を這うような重低音が持続する。これも珍しい。
ガイ・エヴァンスは実はかなりの技巧派ドラマーである。彼のドラミングはある意味「硬い」と言える。全くスイングしないと言い換えてもいい。正確なのだ。かといって無機的なのではない。空間を捉えるのに長けているという印象だ。もしドラマーが彼でなければVDGGの音楽の印象はかなり違ったものになったはずである。
それにしても、老いてなお、今の時代に通じるどころか、今の時代にあっても先鋭的な作品を作り続けるVDGGの懐の深さと底力には恐れ入る。
彼らこそ真の意味でプログレッシヴなバンドと言えるだろう。
バンドとしての来日は来年くらいに実現するだろうか。
初来日時の素晴らしいパフォーマンスはまだ記憶に新しい。
首を長くして朗報を待ちたい。
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