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2011年03月06日01:05

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ユジャ・ワン@紀尾井ホール(3/05)

それでは、今日2本目の日記。。。

ユジャ・ワン(王羽佳)を初めて見たのは何年か前のN響アワーだったか。プロコフィエフのコンチェルトを弾いていた。普段N響アワーは流しているだけで真剣に見ることは少ないのだが、このときばかりは「おや?」と思った瞬間に釘付けになってしまった。すごいピアノだったのだ。
野生児のような女の子だと思った。ユジャ・ワンという名前だということを知った。

そのユジャが来日した。単独公演としては日本初である。
今日は紀尾井ホール。リサイタルを聴くには最悪と言ってもいいような席(2階左翼バルコニー)だが、今回はライヴを経験できるだけで満足と思うことにした。それほど人気があるのだ。

当初はショパンの24の前奏曲がメインに組まれていたのだが、昨年末に変更の発表があった。
ショパンを聴きたかったとも思うが、変更後のプログラムも刺激的である。

01.ラフマニノフ:コレルリの主題による変奏曲
02.シューベルト:ピアノ・ソナタ第19番 ハ短調 D958
<休憩>
03.スクリャービン:前奏曲 ロ長調 作品11-11
04.スクリャービン:前奏曲 ロ短調 作品13-6
05.スクリャービン:前奏曲 嬰ト短調 作品11-12
06.スクリャービン:練習曲 嬰ト短調 作品8-9
07.スクリャービン:詩曲第1番 嬰ヘ長調 作品32-1
08.メンデルスゾーン(ラフマニノフ編):スケルツォ(『真夏の夜の夢』より)
09.サン=サーンス(ホロヴィッツ編):死の舞踏
10.ビゼー(ホロヴィッツ編):カルメンの主題による幻想曲
<アンコール>
11.ラフマニノフ:ヴォカリーズ
12.モシュコフスキー:火花
13.グルック:精霊の踊り
14.モーツァルト(ヴォロドス編):トルコ行進曲

ラフマニノフの曲はコレルリの主題と言ってはいるが、実際には有名な「ラ・フォリア」の主題である。ラフマニノフはわかりやすい変奏曲を書く人だ。
シューベルトの前に弾くには大曲と言えるが、そんなのはなんのその。一気呵成に弾き切った。意外なほどメロディーを歌わせるのが上手いなという印象。

シューベルトはちょっと意外なプログラムだなと感じたので楽しみにしていた。この19番からの最後の3つのソナタは「特別なもの」である。
シューベルトの基本は「歌」である。単にメロディーではない。歌えるメロディーなのだ。よってシューベルトの演奏はメロディーが歌わないことには始まらない。それでいて情緒纏綿にやられてしまうとくどくなる。切なさを感じさせつつ、サラッとした質感というのが理想のシューベルトではないかと思う。
ユジャが単に指がよく動くだけのピアニストでないことはこの曲を聴いて確信した。風貌は野生児っぽいが、肌理の細かい演奏をする。技巧をひけらかさず、荒っぽくならず、丁寧に弾いているという印象だった。恣意的なアゴーギクを極力排し、とても純度の高い演奏だったと思う。
激しいだけでなく豊かな歌心も持っているのだなと思う。

後半のスクリャービンは小曲ばかりだが、ここでは磨き抜いた美音を披露する。技巧的な面ばかり注目されがちだが、実は美音の持ち主でもある。スクリャービンを演奏するには美音が不可欠。星のきらめきのような音世界。いい演奏だった。いずれは彼女の演奏でソナタを聴いてみたい。
スクリャービンが考えていた以上に彼の音楽は宇宙を感じさせるのではないかと思う。最近はスクリャービンを取り上げるピアニストが多くなってきて嬉しい。
敢えて言うなら、今日の5曲の中では4曲目に演奏した嬰ト短調の練習曲が特によかった。

最後の3曲は有名曲のトランスクリプション。やはりユジャといったら超絶技巧を聴きたいと思うのは否定できない。アクロバチックな難曲たたみかけ。
こういうのも悪くない。爽快だ。妖精の音楽のメンデルスゾーンもよかったし、ド迫力の『死の舞踏』も楽しい。カルメン幻想曲は痛快な演奏。ここまでやられると気持ちいい。

ちなみに、プログラムの変更があって、
スクリャービンの作品42-3の前奏曲の代わりに詩曲。
ムソルグスキーの『はげ山の一夜』に代わって、ビゼーのカルメン幻想曲。

アンコールはこれまたビックリのヴォカリーズ。凛とした雰囲気の抒情的な演奏。剛柔併せ持つピアニストだと再認識。『精霊の踊り』も同じタイプの演奏。
技巧派にありがちな音の汚れがない。激しい打鍵でも音が荒れない。これはいいことだ。彼女の音は綺麗だ。
大盤振る舞いのアンコール4曲。締めは『トルコ行進曲』。ヴォロドスという人が超絶技巧に編曲したバージョン。これを聴けただけでも行った意味がある。ケレン味のない超絶技巧。すごい!

いやはや、ユジャ・ワンは想像以上にすごいピアニストだ。技巧だけでなく音楽性も豊かである。
今回聴けてよかった。楽しかったというよりも、おもしろかったという方が当たっている。
すごいぞ、ユジャ・ワン。写真よりもずっと可愛いし。

サイン会の列はとっても長かった。紀尾井で見た中ではいちばん長かったかも。

※ 写真はリリースされたばかりのラフマニノフのコンチェルト集。共演はアバド。
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