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2010年12月10日23:42

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インキネン&日本フィル@サントリーホール

いきなり行くことになってしまったサントリー・ホール。これで平日5日のうち、3日もコンサートに出かけたことになる。
月曜に日本フィルから招待メールが来たのだ。マーラーがプログラミングされていたので、ダメもとで応募したら当たってしまったというわけ。招待なのでもちろん無料である。これはかなりオイシイ話である。とはいえ、チケットの売れ行きが悪かったのかなあ、などとちょっと心配してみたり。でも、多少空席はあったものの、まずまずの入りだったようだ。

席は、1階席のいちばん後ろから2列目。まあ、文句は言うまい。

ピエタリ・インキネンという指揮者は1980年生まれというから、まだ30歳という若さである。昨年日本フィルの首席客演指揮者に就任したのだそうだ。この若さだから相当期待されているということなのだろう。
どうやらヴァイオリニストとしても活動していてその方での評価も高いらしい。
そのフィンランド生まれのインキネンが得意の自国のシベリウスとマーラーをカップリングしたシリーズを来年にかけて行なうのだそうだ。で、今日がその第一弾である。
プログラムは以下の通り。

01.シベリウス:組曲『クリスティアン二世』
<休憩>
02.マーラー:交響曲第1番『巨人』

私はシベリウスが大好きである。しかし、この『クリスティアン二世』という曲には覚えがない。聴いたことはあるような気もするが、印象に残っていないのだ。交響曲第1番と同じ頃というから、かなり若い頃の作品である。なるほど、ロマン派の影響が色濃い劇的な音楽である。とはいえ、独特の寒色系の響きはやはりシベリウスだなと思わせるものがあって、なかなかの佳曲だと思う。インキネンはさすがにシベリウスを得意とするだけあって、日本フィルから「シベリウス・サウンド」を引き出していた。しかし、日本フィルってこんなに弦が綺麗だったかな…?

さて、メインはマーラーの『巨人』である。マーラーの曲としてはいくぶん健全な部分が残っている。屈折した青春賛歌とも言えそうだ。初めて聴いたマーラーはこの曲だったという人も多いのではないだろうか。私もそうである。バーンスタイン&ニューヨーク・フィルという名盤によってマーラーの洗礼を受けたのだ。
最初の交響曲なのに恐ろしいほどの完成度である。ブラームスがベートーヴェンの後継者だとするならば、マーラーのこの曲はシューベルトのハ長調の大交響曲の直系にあたると思う。シューベルトもマーラーも旋律は素材ではなく、「歌」なのだと思うのだ。
細かいところになるが、私見ではあるものの注目の聴きどころとして以下の4箇所を挙げておきたい。
まず、第1楽章の長い序奏部。音数が少ないゆえに難しい部分である。緊張感を維持しつつ、清浄な夜明けの雰囲気が出せるかどうか。
第2楽章の中間部のレントラーはこの曲の中で最も美しいメロディーを持っている。レントラーとはワルツの親戚のようなものだが、ここはたっぷりセンチメンタルに演奏して欲しいところだ。
第3楽章はまさしくマーラーがマーラーたる所以のような音楽。アンビヴァレンツの音世界。全体が聴きどころなのだが、中間部の夢見るようなヴァイオリンのメロディーに注目。
終楽章の終盤、オーボエの切ないモノローグから盛り上がるところ、ここはこの曲全体の解釈に影響するところで、ここがコケるとそれまでがいくら良くても印象が悪くなる。

さて、インキネンは予想に反して意外に濃いマーラーを聴かせてくれた。センチメンタルな情緒にも不足なく、精緻な音作りには好感が持てる。自身がヴァイオリニストということもあるからか、弦の鳴らし方が上手い。音のバランス感もよく、耳がいいのだろうなという感じを受ける。
大編成のクセに全体で鳴るのが意外に少ないマーラーゆえに指揮者の能力が要求されるわけだし、オーケストラの高いスキルも求められる。これは期待以上のマーラーだったと言える。テンポがゆったりめで、非常にタメの効いた演奏だった。最近はサラッとした質感のマーラー演奏が多いが、そうしたトレンドとは方向性を異にしたものだったと思う。
第1楽章の序奏も適度な緊張感があったし、主部に入っても緊張感を維持したまま展開していく。メロディーの歌わせ方は意外に細かく表情付けられていた。ゆったりとしたテンポで堂々たるものだ。もっともこの楽章はそんなに神経質ではなくもっとおおらかな方が良いという意見もありそうだ。
第2楽章のスケルツォ部分はもう少しグルーヴ感があってもいいかなと思うが、中間部のレントラーは上手い。やや淡白ではあるが、音が美しい。これはこれで良いと思う。
第3楽章は不気味さと優美さとが混在した音楽。このアンビヴァレンツをどう描き出すかが難しいところだろう。インキネンはずいぶん真面目なアプローチだったと思う。全曲を俯瞰したときのバランスとしては正解だと思うが、もう少し遊び心があっても良かったかもしれない。中間部のヴァイオリンに寄り添うようなハープの音色が印象的。
さて、休みなく続く終楽章こそインキネンにとっては聴かせどころと考えていたのかもしれない(まあ、たいていそうだが)。それまでとは一転して熱くたぎるような演奏だった。クールな雰囲気を保ちつつ、それでも熱くならずにはいられない、そんな演奏だ。彼はたぶん歌心があるのだろう。おそらく自然にメロディーを歌わせる術に長けているのだ。理想と現実の葛藤、夢破れてもなお歩いてゆかねばならない。マーラーはこのときはまだ未来を見ていた。そんな解釈だったと思う。
というわけで、細かいところで注文を付けたいところはあるにせよ、とても良い演奏だったと思う。
ピエタリ・インキネン、この名前は覚えておいた方がよさそうだ。
なかなかのイケメンのようだから、女性の人気も出そう?

次回は6番『悲劇的』を取り上げるのだそうだ。一般的な基準では『巨人』ですら屈折しまくりだと思うが、さらに百鬼夜行のような曲をどう演奏するか、興味がある。この曲にはまあまあ良かったはありえない。名演か駄演かのどちらかである。いまだメッツマッハーの尋常ならざる演奏の印象が強いのだが、聴いてみる価値はありそうだ。というか、このシベリウスとマーラーのカップリング・シリーズは注目すべきかも。

って最初は無料だったけど、結局乗せられてるんじゃん。。。
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