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2010年04月23日22:04

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三浦友理枝嬢の新譜はいいぞ

今回も麗しいジャケットでごじゃりまする。

三浦友理枝嬢の4枚目のアルバムがリリースされた。
メインを24の前奏曲に据えたショパン作品集。

24の前奏曲は昨年のせんくら、そして先週のリサイタルで聴いている。
CDの印象もライヴそのままと言ってもいい。音の粒立ちのよさと左手の打鍵の強さが相まって、相変わらず彼女らしいビターなショパンだ。本来の音の美しさはライヴでこそ、というのは当然としても、CDでも十分感じ取れるのではないかと思う。

この曲、最近はメジューエワの新録音盤をよく聴いていた。端整な中にも微妙な情感の移ろいが感じられる優れた演奏だ。派手さはないが聴き飽きない。
メジューエワの演奏が大人の女性だとすれば、友理枝嬢の演奏はもっとやんちゃな感じ。ただ曲としてのスキームをはみ出してしまうということはない。アゴーギクも自然だし、テンポのメリハリもいい。考え抜かれた演奏だという気がする。
低音の鳴りがいいので重心が低い。打鍵が強いと往々にして音が荒れる。しかし、彼女の場合は全く音が汚れない。しかも音の抜けがいいので鈍重な感じはない。音の粒立ちがいいというのは低音にも言えるのだ。低音がガッチリしているからこそ、高音の美しさが際立つとも言える。また、その逆に、しなやかに歌う右手があるからこそ、左手のダイナミズムが生きるとも言える。相乗効果なのだろう。
『雨だれ』(15番)の光と影のコントラストも見事。20番の葬送行進曲風の雰囲気もよい。高速曲でのスピード感も爽快だ。なにより終曲の24番の左手がド迫力だ。最後に三回強打される低音。弔鐘のような和音で曲集を閉じたショパンの心境はどのようなものだったろうか。そんなことを考えさせてくれる演奏だ。
彼女の演奏に迷いがない。口当たりのいいショパンを求めるならば相応しくないだろうが、奏者の個性が出た優れた演奏だと思う。

彼女の演奏に惹かれるのはそこだ。彼女にしかできない音楽、それを持っている。

今回のアルバムには『ボレロ』が収録されている。ショパンの『ボレロ』である。
若書きの作品だ。初めて聴いたが、リズミカルで華やいだいい曲だと思う。彼女も情熱的に演奏している。

友理枝嬢は間違いなく美人である。しかしながら、彼女はその優れた容姿を話題にされることを好まないフシがある。
デビュー当初、そのルックスからアイドル路線に乗せられるのではないか、と心配したものである。小柄で華奢で、黙って立っていればお人形さんのようで、アイドルとして男性ファンを掴むという戦略はあっただろうと想像する。
初めてライヴを観たのは、デビュー・アルバムの際のインストア・イベント。アルバムの目玉となっていたのがラヴェルの『ラ・ヴァルス』のピアノ版。超絶難曲として知られる。これをイベントで演奏するのか、それとも温存するのか。今振り返ると失礼な話だが、私は温存すると思っていた。しかし、彼女はさも当然と言わんばかりに演奏した。一点の瑕もなく、しばしば腰を浮かすほどの熱演ぶりだった。
現代の音楽も弾いていきたい。その言葉に気概を感じた。気の強そうな顔つきに、黙ってアイドル路線に乗せられるタマじゃないな、仮に乗せられても間違いなく踏み外す、と安心した。
そして、リサイタルでは得意のショパンやラヴェルにまじえて、シマノフスキやスクリャービンやメシアンを平気でプログラミングしてくる。全くもって痛快だ。
初めにピアノありき。
やはりそうなのだろうと思う。どんなに美人でもその演奏がへなちょこなら聴き続けようなどとは思わないだろうから。何よりも彼女はその優れた音楽で魅了するのだ。

そんな彼女が面目躍如とも言うべき刺激的なプログラムでリサイタルを行なう。
9月7日(火)、オペラシティ・リサイタルホールにて、「B→C」と題されたオペラシティ主催のシリーズコンサート。バッハからコンテンポラリーということでバッハと現代曲を組み入れれば、奏者が自由にプログラミングできる。いわばそのときの「本音」で勝負できるチャレンジの場と言うこともできる。
凄いプログラムなので記載しておく。テーマはポリフォニーなのだそうだ。

バッハ:フランス組曲第2番
ラヴェル:古風なメヌエット
メシアン:『鳩』、『軽やかな数』(前奏曲集より)
メシアン:『ダイシャクシギ』(『鳥のカタログ』より)
フランク:プレリュード、コラールとフーガ
シマノフスキ:ピアノ・ソナタ第3番
リゲティ:『ワルシャワの秋』(練習曲第1巻より)
バーバー:ピアノ・ソナタ

難曲をズラリと並べたプログラム。凄いのだが、意外ではない。
すでにアルバムを4枚リリースしている彼女としては「B→C」への登場は遅いという感がなくもない。しかし、視点を変えて見てみると、今こそ相応しい時期だという気もするのだ。
日本で現代曲を演奏することに自信が持てたのではないか。
シマノフスキやメシアンなど現代曲では客が呼べない。確かにそれが現実かもしれない。
しかし、昨年3月のリサイタルでのメシアンの『ダイシャクシギ』は雑誌などで高く評価されていた。9月のシマノフスキを核にしたリサイタルはホール側の要望に沿ったものだったという。
そうしたこともあって、現代曲を弾くモチベーションが上がってきたのではないかという気がしてならない。
とりあえずうちには全ての曲のCDがあるので、順番どおりにシミュレーションしてみようっと。
いずれはそういうアルバムも作ってほしいと思うが。。。

新しいアルバムの話からずいぶん逸れてしまったが、素敵なアルバムに仕上がっている。なにより「彼女らしい」というところがいい。
そういえば、楽曲の解説は全て彼女が書いている。2ndのショパン・アルバムもそうだった。いいことだと思う。彼女がどう考えて演奏しているか、それを知るとっかかりになるはずだ。

しかし、彼女のライヴは凄いぞ。
あ〜、また24の前奏曲をライヴで聴きたくなってきた。
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