リチャード・カッツ『給料を上げれば日本は復活する』(ハヤカワ新書)を読みました。
著者は、日本経済および日米関係を専門とするジャーナリストだそうです。
本書の英語の原題は Raise Wages to Help Japan Revive であり、2026年の出版です。
本書では、デフレが終わったにもかかわらず、普通の人々の生活が苦しいのは、物価上昇に賃金が追いついていないためであると指摘しています。大きな理由として、1995年から約30年のタイムスパンで考えて、平均的な労働者の賃金、物価を考えた実質賃金が上がっていない一方で、平均的な労働者が産出する1時間当たりのGDPが+40%増加している点を上げています。
要するに、この30年間、成長の果実である労働生産性の向上分が、労働者に適切に分配されてこなかった点を重視しています。アベノミクスの最大の問題点は、そもそも、黒田日銀総裁が始めた異次元緩和によってもデフレが終わらなかった点ですが、それに続く第2の問題はトリックルダウンが生じなかったことです。この第2の点を本書では鋭く指摘し、企業が成長の成果を労働者に分配してこなかった点を批判しています。
その帰結のひとつが外的ショックに弱いことに現れている、とも指摘しています。要するに、企業が賃金を上げなかったため、消費が伸び悩んで外需に頼らざるを得ず、外的ショックに敏感になっている、という主張です。したがって、トランプ関税に翻弄され、中東戦争によるエネルギー価格の上昇に脆弱で、為替レートへの影響が大きくなっている、という結論です。
私自身は、日本の成長が阻害されている要因はそれほど単純ではなく、"One Size Fits All" 的に「これさえ変えれば、すべてがうまくいく」といった処方箋にはそれほど大きな信頼は置きませんが、賃金上昇が日本経済復活のひとつの大きな条件である、という点には合意します。
何度か繰り返しましたが、日本の現在の世界経済におけるポジションは、先進国の中で下位グループに属し、本書でも何度か指摘しているように、かつては日本の後塵を拝していた韓国に水をあけられつつあります。
私の個人的な感想ながら、外国人への反感、特に嫌韓・嫌中はこういったかつての韓国や中国に対する日本の経済的な優位性が失われていくことへの反感も含まれているものと考えなくもありません。日本経済が韓国や中国と比べて圧倒的に優位だったバブル経済期にはあり得ないような嫌韓・嫌中感情だと考えるべきです。
主要な主張である賃金引上げとともに、極めて鋭い企業や経営に対する批判も展開していて、最大の批判はイノベーションへの取組みです。加えて、脱成長コミュニズムへの批判、さらに、日本政府の脱炭素の取組おみの遅れが、逆に、成長を阻害しているという議論を展開しています。
諸外国との比較、特に韓国との比較は嫌中も含めて嫌韓の人の耳には痛いところであるかもしれません。
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