堤未果の『すばらしい新世界』(集英社新書)を読みました。
著者は、国際ジャーナリスト、と本書では紹介されています。
タイトルをどう表記すればいいのか判らないのですが、出版社のサイトに従っています。学術論文を書く私のセンスからすれば、堤未果『堤未果の『すばらしい新世界』』(集英社新書)と二重カギ括弧がダブるような気もします。
タイトルから用意に想像できるように、約100年前1930年代のオルダス・ハクスリーによるディストピア小説『すばらしい新世界』を意識したものとなっています。ただ、日本語で日本人を対象に書かれていますので、仏教の四苦である「生老病死」になぞらえた構成となっています。
第1章「生」では、デザイナーベビーという言葉こそ使っていませんが、遺伝子操作された赤ちゃん、さらに最先端を行く優秀な受精卵の売買、ペットのクローン作成、などに焦点を当てています。第2章「老」では、老化が遺伝子コピーのバグであることは、それはその通りなのですが、いろんな最先端医療技術などにより150歳までの寿命を達成したり、若返りの人体実験を自ら試行したり、果ては、肉体が死んでもデジタルで生き続ける方法などが取り上げられています。
第3章「病」ではハクスリーの『すばらしい新世界』における万能薬のソーマを持ち出して、現時点の抗うつ薬ブロザックを論じています。埋込み型の監視カメラが食生活までコントロールする世界とか、AIが人間を監視・監督する会社なども当然のように注目されています。第4章「死」では安楽死から始まります。私はよく知らなかったのですが、カナダでは20人に1人が医師の手で死んでいるらしいです。著者自らの叔母ががん治療を拒否して死んでいくのにも、少し怖い気がするのは私だけではないと思いますが、同時に共感する読者もいそうです。
はい、私もこの分野にはそれほどの知見を持ち合わせませんから、詳細はお読みいただくしかありません。しかし、他方で、劇症だったり致死率の高い伝染病であれば社会的な課題となりますが、本書で取り上げている範囲では、確かに個人の選択の問題であるとするレベルの問題が少なくない気もします。
ですから、第1章「生」が典型ですが、神の分野かヒトの分野か、というのは宗教に近い気もします。いずれにせよ、本書で議論しているのは容易に結論が得られるテーマではありません。ですので、読者がそれぞれ熟慮して解決を図るべき問題であろうかと思います。
ログインしてコメントを確認・投稿する