mixiユーザー(id:68108846)

2026年09月15日07:21

43 view

友寄英隆『日本経済再生への道』(新日本出版社)

友寄英隆『日本経済再生への道』(新日本出版社)を読みました。
著者は、労働者教育協会理事であり、同じ出版社の月刊誌『経済』編集長などを歴任しています。
本書は、表紙画像にあるように、マクロ経済学の合成の誤謬をキーワードとし、新自由主義的な経済政策からマルクス主義経済学的な計画経済を志向するものです。
まず、本書では新自由主義を明確には定義していません。pp.10-11に簡潔に7の視点を提示しているだけで、その点は批判あると思います。
私の考えでは、新自由主義とは、1970年代に2度に渡る石油危機やニクソン米国大統領によるドルショックなどを契機に、戦後経済のいわゆる「栄光の30年」(フラスティエ著、Les Trente Glorieuses, ou la révolution invisible de 1946 à 1975 など参照)が終わり、ケインズ経済学がインフレ抑制に失敗したことから、本書でも指摘しているように、反動的な新古典派経済学が巻き戻しを図ったことにより、現在まで、日米をはじめとしていくつかの先進国の経済政策の主流となっています。
確かに、本書の先に指摘したページで概観されている通りですが、何といっても、政府、すなわち、中央政府や地方政府を民間企業と同じような原理で運営することから始まっています。今ではもう誰も注目していないニュー・パブリック・マネジメント(NPM)と呼ばれた手法です。
ですから、現在の米国のトランプ大統領が典型で、連邦政府を企業マネジメントと同じように考え、外交交渉を取引(ディール)を見なします。要するに、企業と同じ損得で考えるわけです。逆にいえば、公共財の供給という視点が希薄なわけです。
ですので、市場万能主義・市場原理主義はいうまでもなく、企業経営と同じで低所得者よりも富裕層に有利で、公助よりも共助、さらに自助と自己責任が強調され、グローバル化が進んだ経済社会で、利益を上げられる場所を探してモビリティが高く、利益が出るのであれば武器輸出でも何でも手を出す、というわけです。そういった基本的理解の上で、本書で提示されている7つの観点を読むといいと思います。
という前置きが長くなりましたが、本書では合成の誤謬を強調していますが、私はどちらかといえば、囚人のジレンマの方も頭においておく必要があると考えています。すなわち、例えば、労働者への賃金で考えると、他社労働者の賃上げが進む一方で、自社労働者の賃下げや賃金据置きができると、コスト削減から利益の増大が可能となります。しかし、少し前までの日本の状況のように、各社いっせいにそろって賃上げが進まないとなると、所得が停滞して消費が増加せず、景気が悪いままで推移することになりかねません。
その上で、本書では戦後日本の経済計画について評価しています。はい、一定の限界あるとはいえ、私も役所の同僚とともに "Japan's High-Growth Postwar Period: The Role of Economic Plans" というリサーチ結果を取りまとめ、世銀リポートに引用されたりして、途上国の経済発展における経済計画の果たす役割や重要性を強調しています。ただ、日本は先進国ではないか、という反論もあろうかと思いますが、それほど、というか、旧ソ連的な中央政府から指令を出すがごとき計画経済ではなく、本書でも指摘しているような何らかの indicative/informative な役割を主眼とする経済計画は有益であろうと考えています。
いつも私が強調するところですが、日本政府は経済計画をヤメにしてしまいましたが、おそらく、ほぼほぼすべての上場企業では毎年の経営計画、さらに、中期的な経営計画(よく「中計」と略称されるもの)を持っている、というか、作成しているのではないでしょうか。上場企業よりも規模が大きく、年間予算で100兆円をはるかに超える中央政府が、そういった経済計画を持たないのは、むしろ無責任といえます。
ほかにも、私自身はマルクス主義経済学の専門性はまったく持ち合わせないので、本書をそれほど的確に評価する能力も十分ではないかもしれませんが、本書が一定の合理性ある方向を示していると評価しています。

1 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する