佐々木宏夫『「二つの人生」を生きるための経済学再入門』(慶應義塾大学出版会)を読みました。
著者は、早稲田大学名誉教授です。ゲーム論がご専門のようです。本書冒頭では、人生100年時代が到来し、織田信長の幸若舞のような「人生50年」とは違う生き方、人生を模索する目的を表明しています。
経済学などではオーバーラッピング・ジェネレーション・モデルとして現役世代が働いて、引退世代が貯蓄や年金で生活する、というモデルがあり、同時に、ライフサイクルモデルとも重なる部分があります。そして、長くなった人生に対して、必ずしも合理性ばかりではなく、生きる知恵としての常識の体系として経済学を活かす方法を本書では考えています。
私は単なる呼称だけの問題のような気もしますが、「第1の現役時代」と「第2の現役時代」と本書では呼んでいます。その第1と第2のそれぞれの「現役時代」の対象表がp.11に示されています。私自身はまだ働いていて、年金生活には入っていないとはいえ、ほぼほぼ本書でいう「第2の現役時代」に入っている気がします。所得こそ年金ではなくお給料をちょうだいしていますが、子どもたちは大学を卒業して社会人となって独立していますし、本書でも強調しているように、寿命のリスクとしては死んで所得が途絶えるリスクよりも生きながらえて生活費に困窮するリスクの方が大きくなっています。
本書はさすがに大学教授経験者の本らしく、決してハウツー本ではありません。「ハウツー」の基礎となっている考え方、特に経済学やゲーム論について議論を展開しています。例えば、やり直しがきかない「第2の現役時代」における人生の戦略についてゲーム論的な基礎を議論したり、市場や市場における価格から情報を読み取ったり、不動産市場から終の棲家を考えたり、といった議論が進みます。その上で、より大きな社会的な出来事について、社会選択理論を通じた意思決定、市場社会と伝統社会の異同、人口減少の光と影、さらに進んで成長なき経済社会をどう生きるか、などなど、経済リテラシーを活用した「第2の現役時代」の過ごし方について考えています。
繰返しになりますが、決してハウツー本ではなく、長い人生を楽しく豊かに過ごすヒントがいくつか読み取れると思います。
ログインしてコメントを確認・投稿する