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2026年08月22日07:33

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カーター・ディクスン『赤後家の殺人』(創元推理文庫)を読みました

カーター・ディクスン『赤後家の殺人』(創元推理文庫)を読みました。
作者は、ご存じ、今世紀前半もっとも傑出したミステリ作家の1人です。米国ペンシルヴァニア州生まれながら、英国に移住してロンドンを舞台にしたミステリも数多くあります。英語の原題は The Red Widow Murders であり、1935年の出版、本書は高見治による新訳版となっています。
本書は、ヘンリー・メリヴェール卿(H.M.)のシリーズであり、したがって、というか、何というか、密室殺人を扱っています。ホームズ役の探偵はH.M.であることに間違いはないのですが、ワトソン役は米国のハーヴァード大学の英語学講座のテアレイン教授です。
舞台はロンドンのマントリング邸、フランス革命当時の死刑執行人一族の家具が運び込まれ、過去に4人が怪死を遂げたという後家部屋の実験を行うのに、H.M.とテアレイン教授、また、H.M.の友人の大英博物館長のジョージ・アンストラザー卿を含めた何人かが参加します。2人以上なら死者が出ないが、1人で2時間こもれば死ぬ、という言い伝えです。もっとも、ジョージ卿とテアレイン教授は立ち合い人として、カード引きには参加しませんでした。
カードでスペードのエースを引き当てたフランス人が部屋に入り、15分おきに部屋の外からの呼びかけに応じていましたが、毒殺されて発見されます。死因はクラーレであり、この毒は口から飲んでも何も悪影響がないのですが、毒針で刺されたりすると致命的となります。死者にはクラーレを刺されたような不審な外傷はなく、どのように毒が注入されたのかが謎となります。
なお、毒物のクラーレは冒険旅行好きな当主のマントリング卿が収集したものでした。ロンドン警視庁のマスターズ主任警部が赤後家の部屋を徹底的に捜査するのですが、家具から毒針が飛び出すような機械的なトリックはどこからも発見することができません。
そうこうしているうちに、後家部屋で第2の殺人が起こります。この家の歴史やオカルティズムに耽溺しており、警視庁からは犯人の容疑が濃いと思われていた当主マントリング卿の弟ガイが、後頭部を凶器で殴られて撲殺されて発見されます。
最後に、本書の作者は、カーター・ディクスンなのですが、広く知られているように、ジョン・ディクスン・カーの別名義です。本書は、かなりオカルト趣味の要素を含み、出版当時は日本でも江戸川乱歩はじめとして評価が高かったのですが、死者の返答の声や密室やアリバイなど、後になってオカルト趣味とともにやや否定的な評価も出た作品か、という気がします。
最後の最後に、個人的な事情をひとつ。ヘンリー・メリヴェール卿は、『黒死荘の殺人』で初登場するわけで、本書でもその『黒死荘の殺人』からいくつか引用されています。私はそれらの引用に覚えがあるので、『黒死荘の殺人』を読んだことはほぼほぼ間違いありませんが、犯人はもちろん詳細についてまったく記憶にありません。私の記憶力からすればあり得ないことではなく、昨年は本書の続編的な『爬虫類館の殺人』を読みましたし、何かの機会に『黒死荘の殺人』も再読しておきたいと思います。

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