mixiユーザー(id:68108846)

2026年08月14日13:15

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全米経済研究所(NBER)のワーキングペーパー "The Sisyphean Pursuit of Evidence for Poverty Traps" を読みました

全米経済研究所(NBER)のワーキングペーパー "The Sisyphean Pursuit of Evidence for Poverty Traps" を読みました。やや刺激的なタイトルであり、「貧困の罠」に関して、ビッグプッシュの効果を実証した Balboni らの論文 "Why Do People Stay Poor?" (BBBGH) を否定する結果を示しています。すなわち、BBBGHでは、牛1頭を少し上回る初期資産(2007年購買力平価の米ドル500ドル少々)があれば、貧困の罠から脱出できるという閾値(threshold)が存在し、この額のビッグプッシュがあれば極度の貧困から抜け出せる、という結論をバングラデシュにおける6000世帯、11年間のパネルデータにより実証しています。しかし、このワーキングペーパーでは、BBBGHの結論について、対数変換の問題と地理的要因による交絡(a log-transformation challenge and a potential geographic confound)から、この閾値の存在を否定しています。
地理的要因による交絡はさておき、前者の対数変換の問題については、ワーキングペーパーの Figure 2 を見ると、3つのパネルにおいて、対数変換が3通りずつ示されています。すなわち、BBBGHオリジナルの log(x/1000+1) の前後、というか、何というか、log(x/10000+1) と log(x/100+1) です。このグラフなどから、対数変換の方法によってS字型や45度線との交差が現れるかどうかが大きく変わる可能性を示唆しています。加えて、引用はしませんが、地理的要因も含めて、実証分析の手法上の問題を主張しています。
はい、実に情けなくも私の力量では、Balboni らの論文 "Why Do People Stay Poor?" (BBBGH)が正しいのか、このワーキングペーパー "The Sisyphean Pursuit of Evidence for Poverty Traps" が正しいのか、にわかには結論できません。BBBGHは何といっても6000世帯というかなり大きなサンプルについて11年に及ぶ長期の実証データを用いた結論を示していますし、レフェリーによる審査もパスしています。このワーキングペーパーについても、レフェリーによる審査を待ちたいと思います。


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