mixiユーザー(id:68108846)

2026年08月12日07:55

40 view

藤谷昌敏『経済安全保障と「経済インテリジェンス」』(芙蓉書房出版)を読みました

藤谷昌敏『経済安全保障と「経済インテリジェンス」』(芙蓉書房出版)を読みました。
著者は、金沢工業大学産学連携室主任研究員・明倫館教授だそうで、これだけでは何のことか私は理解できませんが、長らく公安調査庁にご勤務されていたようです。
本書では、サプライチェーンの脆弱性に関する指摘もありますが、主として、半導体、AI、量子技術、サイバー空間など、いわゆる最先端技術の海外流出、特に、中国を念頭に置いた経済安全保障について論じています。ただ、どちらかというと、ケーススタディ、というか、実例を豊富に取り上げている印象です。そして、それぞれのケースで理論的な経済安全保障とか、インテリジェンスを小難しげに抽出するのではなく、模式的な概念図、私が公務員であったころには「ポンチ絵」と呼ばれていたものをいくつか援用して、私のようなシロートにもわかりやすく解説しています。ですので、本書は学術書とか専門書ではなく、広く一般読者を対象にしている印象です。
冒頭章でインテリジェンスについて概説した後、第2章では中国の目覚ましい経済発展の背景には、「国家レベルで構築された経済戦略と、情報機関が主導する経済インテリジェンスがあった」(p.9)とはじめにで指摘した中心的な課題が展開されます。特に、中国建国後の大躍進政策、文化大革命、天安門事件を3つの災厄と指摘し、2010年出版の「中国の夢」、さらに、経済発展と安全保障が一体化した「一帯一路」構想について詳しく解説しています。ただ、米国の合成麻薬フェンタニルの原料出荷とか、私には不案内な部分も少なくなく、そのあたりは読んでいただくしかありません。
そして、明示されているわけではありませんが、トゥキディデスの罠にいうように、米中対立の中で武力衝突が生じた場合に日本がどちらと協力するかは自明のこととして議論が進みます。加えて、攻撃的な経済安全保障と防御的なものとの違いについて、あるいは、セキュリティ・クリアランスについて、などなど、専門外の私には一知半解だった部分がていねいに一般向けに解説されています。また、大学に勤めている身として、より理工学的な分野とは思いますが、大学における技術情報、あるいは、留学生に関する対応など、私からは違和感ある部分も少なくありませんでした。
第4章では中国による経済スパイ活動が取り上げられており、私個人が注目したのはハニートラップによる情報漏洩です。私がもっとも弱いところだという気がします。第5章の中国における情報機関では、孔子学院の存在について取り上げられていましたが、そのあたりは読んでいただくしかありません。第6章と第7章についても、読んでいただくしかないのですが、1点だけ、外国人による土地所有については私も一定の歯止めが必要だと考えています。
本書のような経済安全保障という観点ではありませんが、日本が先進国の中の平均以下の下位国となり、円安も進んで日本の土地が安くなった現時点では、外国人が土地購入に参入するのは決して好ましくないと、私ですら考えています。
最後に、本書に希薄な点として、政府の責任と企業の責任の役割分担が不明確です。医療保険の個人負担ではありませんが、日本では特に企業向けにはすべてを政府が面倒見るというシステムはとても異質です。私が国家公務員をしていたころには、通商産業省・経済産業省がこういった国家統制にやや前向きなところが見られましたが、どこまで政府が企業に肩代わりしてコスト負担するかについては、十分な国民的合意が必要です。

1 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する