畠中恵『猫君』(集英社文庫)を読みました。
著者は、小説家でありファンタジーの時代小説「しゃばけ」などのシリーズが売れていると思います。本書は新しいシリーズではないかと思います。というのは、すでに続編『猫君 りんねの輪』が単行本で出ています。最近、シリーズ最初の本書が文庫で出たので読んでみました。
軽めのミステリとなっていて、猫又の世界ですので殺人事件は起きませんが、謎解きが展開されます。まず、舞台は江戸期の第11代将軍徳川家斉の時代の江戸です。猫が20年生き長らえると猫又という妖怪になります。本書冒頭に登場する猫又の紹介があります。また、江戸には密かに6つの陣が存在します。順不同で、祭陣、花陣、学陣、黄金陣、姫陣、武陣となります。花陣と姫陣は女、というか、雌の猫又、ほかは雄の猫又の陣です。各陣は軽く対立していて、陣地を拡大しようと画策しています。
この陣とは別に、徳川将軍家の計らいで江戸城内には新米猫又たちが修業する学び舎である猫宿があります。猫宿には長老の長がいて、化け学、算術、猫又史、人間史などの授業があり、もちろん、教師=師がいます。
主人公はみかんという雄猫であり、吉原で髪結師をしているお香さんに飼われていました。しかし、19歳と11か月を経過し、20歳になるまであと数日というところで、みかんの飼い主のお香さんが亡くなってしまいます。猫又になりつつあったみかんがお香さんを取り殺した、とご近所の人に騒がれて逃げていると、祭陣出身で兄者の猫又の加久楽が迎えに来てくれ、ぶじに猫宿にたどり着くことになります。新米猫又はこういった兄者や姉者に介添えをしてもらうようです。
猫宿の長は、もちろん、猫又なのですが、戦国時代は人に化けて人として暮らしていて、当時の名が織田信長だったり、また、同じく戦国時代に人の世に人に化けて暮らしていた猫宿の師の1人が明智光秀だったりして、まあ、何と申しましょうかで支離滅裂で荒唐無稽な雰囲気もあったりします。なお、本書のタイトルの「猫君」というのは、きわめて能力に秀でた猫又の王のことで、みかんのいる時代に出現したのではないか、といわれています。
主人公のみかんは素直で正義感の強い茶虎なのですが、ほかに、猫宿に入学してきたのは、狸にも似たのんびり屋のぽん太、吉原出身で気立ての良い白花、戦闘の際も、気も強い仕切り屋の毬姫、気位は高いが面倒見のいい黒若、などであり、猫宿に新たに入った新米猫又は20匹ほどいます。
みかんらの新米猫又がいろんな無理難題をこなしていくストーリーで、たぶん、私の実感では中学生くらいであれば十分に読みこなすことが可能です。あるいは、小学校高学年であれば何とかなるかもしれません。その意味で、ひょっとしたら、家族構成次第では一家で楽しむことができる時代小説かもしれません。
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