今野敏『分水』(新潮社)を読みました。
著者は、日本でももっとも売れているミステリ作家の1人です。
本書は、神奈川県警刑事部長の竜崎と警視庁刑事部長の伊丹という2人の警察庁の同期入庁のキャリア警察官を主人公にした「隠蔽捜査」シリーズの第11巻です。もっとも、本書では竜崎がもっぱら主人公であり、伊丹は竜崎からの電話相手としてしか登場しません。
竜崎の所属する神奈川県警の所轄警察署のひとつである鎌倉署の管内にある住宅で不審火が発生します。自宅の塀の一部が燃えただけの小火なのですが、その住宅が与党大物代議士の自宅、しかも、殿様と呼ばれる父親と若殿と呼ばれる息子の2人とも代議士という代々の国会議員宅、さらに、地元の歴史的価値ある洋館建て、ということで、県警や所轄署にそれなりの緊張感が走ります。
所轄の鎌倉署の刑事課長の父親は、何と、その代議士の後援会長だったりしますし、竜崎や伊丹と同期キャリアで県警刑務部長の八島が、役所内での出世を目指して代議士とのコネ作りのために事件に首を突っ込んだりもします。
そういった雑音が多い不審火事件を捜査するうちに、若殿の秘書と小競り合いを演じた暴露系・迷惑系ユーチューバーが絞殺された死体で発見されます。そのユーチューバーは、もっとも頻繁に代議士宅付近のSNS動画に登場すると、県警サイバー犯罪捜査官から指摘されていて、不審火の放火犯である疑いがかかっていました。
他方、竜崎の家庭では姉弟のうちの社会人である娘が都内にアパートを借りて独立するのではないか、と竜崎の妻が心配したりしています。
果たして、不審火の放火とユーチューバーの殺人が、どのようにリンクしているのかしていないのか、また、放火の犯人と殺人の犯人はいかに、といったのが読ませどころです。
かつては、竜崎の仕事の進め方がやや「変人」っぽく描かれていましたが、この作品ではそうでもなく、純粋なミステリに仕上がっているように私は受け止めました。
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