mixiユーザー(id:68108846)

2026年06月14日07:41

34 view

方丈貴恵『矛と盾』(角川書店)を読みました

方丈貴恵『矛と盾』(角川書店)を読みました。
著者は、我が母校である京都大学のミス研ご出身のミステリ作家です。デビュー以来この作家の作品はだいたいの作品は読んでいると私は自負しています。
本書は、タイトル通り、というか、何というか、どちらが矛でどちらが盾かはさて置き、罪を犯した者を必ず捕らえて有罪にするという意味で、絶対に逃さない探偵である草津、そして、その草津を助手としてアシストする霧島、逆に、事件を隠蔽して証拠すら捏造して犯人を確実に逃がすという意味で、必ず無罪にする仕事人のヒミコこと氷見の3人が主たる登場人物です。3人は一時期同じ中学校の同級生だったことがあるという設定です。長編というよりは、短編から中編くらいの連作中編集といった構成で、3章から編まれています。
第1章では本書全体のプロットも案内しつつ、雪山の別荘で置きた殺人事件の密室トリック、第2章が健康食品会社の社長の殺人事件で、東京と大阪という距離的に離れた場所をめぐるアリバイトリック、第3章が東京西部の山奥の閉鎖的な集落における密室かつアリバイトリック、となっていて、それぞれに趣向を凝らしている点は評価できると思います。
ただし、同じ学校に在籍した同級生が犯罪者と探偵で対決するという趣向は、例えば、青崎有吾「ノッキンオン・ロックドドア」のシリーズもあって、それほどめずらしいわけではありません。しかも、論理的に犯人を探るwhodunnitや手法を推理するhowdunnitではなく、草津が早々に犯人を指摘した後、お互いに探偵サイドでは証拠を捏造したり、あるいは、逃がす方では証拠を隠滅したり、といったアクション合戦に重点が置かれている気がします。
ですので、探偵サイドの草津が自らを知の領分、助手の霧島を暴の領分とうそぶいていますが、決して「知」の占める比率がそれほどでもなく、「暴」の方もそれなりに重要なポイントとなっています。ミステリではハードボイルドなんかでそういうのがありそうな気がします。ただ、論理的なパズルとしては物足りません。そして、明確にシリーズ化はしないという作者の強い意志が最後に表明されています。コナン-ドイルによるライヘンバッハの滝と同じです。また、第3章の出来事は推理題材としてはいいのかもしれませんが、近代国家日本の首都近くの事件としてはいかにも異質な気がして、到底ありえない違和感を感じました。
ギリギリ及第点の60点は稼いでいるかもしれませんが、論理性に欠けたストーリー展開である点が難点であり、それほどの高評価は差し上げられないと感じました。私はこの作家のファンですから読んでおきましたが、そうでなければ、私からオススメするのは少し躊躇します。

1 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する