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2026年06月09日07:53

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中林真幸『経済史で学ぶ社会・経済のしくみ』(日本評論社)を読みました

中林真幸『経済史で学ぶ社会・経済のしくみ』(日本評論社)を読みました。
著者は、東大社研教授です。
本書では、タイトル通りに、経済史から現在の経済社会について学ぶ、というのが目的らしいのですが、序章と終章を除いた全5章を読んで、経済史を題材にしているのは前半3章だけで、第4章と第5章は経済史とはそれほど関係深くありません。
序章で比較制度史的な視点を示した後、第1章では経済の思想を知るという、それほど経済学のメインストリームにはないテーマに挑戦しており、資本主義や共産主義について考えています。ただ、社会主義や共産主義について、生産関係からではなく制度史的に残余制御権と残余請求権で説明しようとするのは、ムリがあるような気がします。分配の制度だけではなく、経済学的な視点であれば生産を念頭に置きたいところです。
第2章と第3章が本書の中核となる部分ではないかと私は考えていて、経済社会の変化と現在の経済社会の成立ちを経済史からひも解こうと試みています。ただ、かなり記述が一面的で、例えば、貨幣に関する考え方なんかは諸説あるところ、かなりご自分の見方だけを披露しているように見えます。すなわち、貨幣としての受容性だけを考えていて、負債の側面をまったく無視しているような気がします。
ですので、この第2章と第3章の中核部分はもちろん、他の部分でも、それほどバランスのいい記述になっているとは言い難く、初学者にオススメするのは少し厳しいと私は受け止めました。むしろ、基礎的な経済学を学んだ後に、ややバランスに欠ける部分を含んでいる可能性を考えつつ本書を読むのがいいような気もします。
江戸幕府と現在の令和の時代の政府の財政を比べるのは、決して不可能ではないかもしれませんが、どこまで意味があるか、あるいは、意味がないかを理解できるレベルがあればともかく、そういった点を明示するような初学者への配慮も欲しいところです。
最後に、繰返しになりますが、第4章と第5章は経済史の題材が尽きたのか、歴史とはそれほど関係なく議論を進めています。日本経済の成長には生産性向上一本足打法なのですが、賃金引上げにはサービスの価格付けも引合いに出しています。こういったいろんな見方が示されている部分は参考にすべきかもしれませんが、一本足打法で決め打ちしている部分は、「読者によって」とはいいつつも、少し眉に唾つけて読んだ方がいい可能性もあります。

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