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2026年05月20日07:37

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マーセル・ディルサス『独裁者の倒し方』(東洋経済)を読みました

マーセル・ディルサス『独裁者の倒し方』(東洋経済)を読みました。
著者は、ドイツ人のようで、ドイツのキール大学安全保障政策研究所の客員研究員だそうです。ただし、本書は英国で英語の出版が最初のようで、英語の原題は How Tyrants Fall であり、2024年の出版です。
本書のひとつの特徴は、独裁者個人に着目するのではなく、システムの中で機能する独裁者を理解しようとしている点です。その昔の「天皇機関説」になぞらえれば、「独裁者機関説」とも言えるかもしれません。
まず、独裁システムをランニングマシン(普通は、トレッドミルだと思うのですが、ダメなんでしょうか)に例えています。走り続けないとかえって危険、周囲の政権エリートや軍人が反旗を翻しその座を奪いに来る、というわけです。トレッドミルから下りて、首尾よく亡命できたとしても送還・処刑されるおそれがあります。
ただ、独裁者1人では独裁体制が維持できるはずもありません。当然です。ですから、本書では独裁者が必要とする3グループを明らかにしています。第1に、理論上大切な人々、あるいは、名目上の選挙母体、第2に、真の選挙母体、第3に、勝利連合、すなわち、真の選挙母体の中から選ばれる少数者、例えば、キャスティングボードを握る人たち、と指摘しています。
側近からの支持や忠誠が独裁者には必要であって、金品や何らかの利益を分与するわけですが、その側近が強力に台頭して独裁者の地位を脅かすことは避けねばなりません。ここにジレンマがあるという指摘です。加えて、軍隊からの支持も必要なのですが、クーデタを防止することにも配慮する必要があります。
本書のもうひとつの特徴は、かなり膨大な独裁政権やクーデタに関するデータベースを構築し、構造的あるいはシステム的な分析にとどまらず、他の研究成果からの引用も含めて、それなりのデータに基づく分析をしている点です。例えば、私が選挙とともに重視しているチェノウェス教授が提唱する3.5%ルールについては、失敗の例外を2件指摘していたりしますし、暗殺の確率について1910年代に1%あったが、21世紀の現在では0.3%を下回る、といった指摘もしています。
最後に、独裁者の政権交代の難しさを取り上げています。私自身の1990年代前半における在チリ大使館の勤務の直前のピノチェット将軍からの民政移管は大きな例外と感じています。第8章では、外国による政権交代が失敗する理由をいくつか上げています。ただ、私自身の感想としては、たとえ独裁者であろうとも外国の武力介入による政権交代については、疑問を持つべきではないか、と考えています。
最後の最後に、本書のテーマはいうまでもなく独裁、ないし、独裁者なのですが、第1に、民主化への道筋を探るという観点も忘れてはいません。第2に、現在の日本の高市内閣や米国のトランプ政権なども含めて、権力というものの本質が本書の分析からいくつか垣間見えます。私は専門外ですし、そういった読み方はしませんでしたが、こういった観点からの読書も十分できる良書だと思います。

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