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2026年05月17日07:49

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平石さなぎ『ギアを上げて、風を鳴らして』(集英社)を読みました

平石さなぎ『ギアを上げて、風を鳴らして』(集英社)を読みました。
著者は、作家なのでしょうが、この作品で第38回小説すばる新人賞を受賞しています。
主人公は、いずれも小学4年生女子の吉沢癒知と渡来クミの2人です。それぞれの視点からのストーリーが交互に進みます。
主人公2人は、当然、同じ小学校に通っていますが、クミが普通のクラスであるのに対して、癒知は支援学級であるわかごま学級に通学しています。どうしてかというと、癒知は全国に20万人の信者を有する新興宗教団体「荻堂創流会」の近畿支部において、「降り子」と呼ばれる創父=開祖の生まれ変わりとして信徒たちから崇拝の対象となっている存在であり、頭はいいもののコミュニケーション能力に難があって、他の児童と問題を起こしがちなもので、わかごま学級に通っています。世話役の森田はもちろん、近畿支部長や支部幹部の母親の加奈からでさえ「癒知さま」と呼ばれ、定期的に「浄器の儀」という儀式を司り、教戒に従って食べ物にも制限があり、普通の小学生女子がスイーツを食べて「う〜ん、しあわせ」という感覚は理解できません。儀式の折を別にして母親とすら肌を接することを禁じられていて、そういった教戒を破る破戒行為は創父の怒りをかって地獄に落ちるといわれています。
宗教団体「荻堂創流会」は全国に20万人の信者を有し、在家のほかに、家族や親族と離れて教団の支部に住まいする信者も少なくありません。「浄器の儀」の儀式では、いかにも多額の玉串料が払われているようです。
他方、父親の頻繁な転勤により、クミが関西の片田舎の梢が丘に引っ越してきて、教団近畿支部の癒知を見かけ興味を抱き、学校で接触を試みるところからストーリーは始まります。小学校を離れても、古い山城の隙間の空間を見つけて、まあ、男子小学生でいえば「秘密基地」のようにして2人いっしょに遊んだり、その近くの公園で癒知がクミの助けを得て自転車の練習をしたりするのが前半ストーリーとなります。
4月の学年始まりから1年もしない晩秋になって、転勤族である父親の転勤で、クミも転校するのと同じタイミングから、後半ストーリーが大きく展開します。タイトルと表紙画像はリンクしていて、主人公である吉沢癒知と渡来クミが自転車で逃げているところです。なぜ、逃げているか、また、後半ストーリーの展開などは読んでみてのお楽しみです。
何分、新興宗教が根底にある小説ですから、好み、というか、好き嫌いがあると思います。でも、しあわせとは何か、家族や親子の関係などなど、いろいろと深い意味も読み取れます。万人へのオススメは出来ませんが、読めば何かが得られる可能性のある小説です。

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