mixiユーザー(id:68108846)

2026年05月12日07:29

56 view

ダリン M. マクマホン『<平等>の人類史』(作品社)を読みました

ダリン M. マクマホン『<平等>の人類史』(作品社)を読みました。
著者は、米国ダートマス大学の歴史学教授だそうです。
英語の原題は Equality: The History of an Elusive Idea であり、2023年の出版です。本書はタイトル通りに、不平等ではない平等の歴史を概観しています。
昨年2025年の今ごろの5月に、私は田中将人『平等とは何か』(中公新書)を読んでいます。そこでは、ロールズやスキャンロンの平等観を発展させて、実証研究ではなく規範研究の方法を取って平等について考えていました。
本書では、まず冒頭の序文で、平等の歴史であって、不平等の歴史ではない点が強調されています。しかも、生物学的に、というか、何というか、チンパンジーやボノボの世界は決して平等ではない、という点も強調されています。ついでながら、マルクス-エンゲルスも平等と平等主義の政策には批判的だった、とも言及されています。その上で、太古の昔のいわゆる原始共産制のころから始めて、平等について歴史的な見方を示しています。注を含めて500ページを超える力作であり、3部構成となっています。
マルクス主義的な歴史区分で示せば、第�吃瑤埜胸篭�産制から奴隷制くらいまで、第�局瑤埜電妓殿紊離�リシア-ローマ時代から近代初頭のフランス革命くらいまで、第�敬瑤任修谿聞澆龍畭紊�ら現代に焦点を当てています。
私の勝手な読み方かもしれませんが、生産拡大とともに剰余生産物を獲得するため、初期国家に神々が創造されて、その片方で奴隷も誕生し、搾取が始まって平等は失われます。古典古代のギリシアやローマでは奴隷が生産に従事し、平等とは市民、とくに、男性の市民の間での関係性となります。女性、奴隷、外国人は公共の場での活動から除外されます。
そして、キリスト教が広まります。神のもとでの平等が導入され、神の愛により自由民と奴隷は平等と考えられるようになります。さらに、ストア派は人間の潜在能力の同等性を主張しはじめ、これは人々の解放の可能性を秘めていた、と本書では主張しています。このあたりは、キリスト教の教義には詳しくないので、私には微妙に理解が進まない点だったりします。
そして、暗黒の中世をすっ飛ばして、人類の平等の近代的な起源は啓蒙主義との指摘があります。これは大方のコンセンサスかと私は考えています。ルソーの『人間不平等起源説』や米国独立革命についても言及されています。ただ、この両者の平等観に大きな違いがあるのは周知の事実かと思います。また、私の専門分野に関連して、経済学の父であるアダム・スミスの平等観がp.199にあり、各人の生まれつきの才能の違いは実際には小さい、との指摘が『国富論』から引用されています。
フランス革命を経て、さらに、20世紀初頭のロシアにおける共産主義革命から、平等の追求が大きく前進した、との指摘は、まあ、そうなのだろうと私も考えます。ただ、同時に、プルードンからの引用ながら、共産主義とは不平等なものであり、弱者が強者を搾取する、という観点も言及しています。そして、再度、マルクスが共産主義について平等・公平と考えていた根拠は何らない、と指摘されています。
ファシズムにおける平等観は少し難解であり、国連の設立により国家間の平等は制度上は担保されたように見える一方で、安全保障理事会での拒否権などにより、国家間での平等はほとんどないに等しいという現状の指摘も、その通りかと私は考えています。最終章の平等を達成する導き手や結論性については、やや難解ながら読んでみてのお楽しみです。

1 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する