アンガス・ディートン『格差の国の経済学』(みすず書房)を読みました。
著者は、英国生まれで、米国プリンストン大学公共・国際問題大学院シニア・スカラー、同大経済学・国際問題名誉教授であり、2015年にノーベル経済学賞を受賞してます。ご専門は、貧困、不平等、医療、経済開発となっています。もっとも最近のご著書では、奥様のアン・ケース教授との共著で『絶望死のアメリカ』を私は読みました。なお、本書の英語の原題は Economics in America であり、2023年の出版です。
本書は、英語の原題の通り、米国の経済学について、英国生まれの著者なりに概観しています。すなわち、大雑把に言って、シカゴ学派に代表されるミクロ経済学については、効率性を重視する余り不平等を許容し、いわゆる経済力を持つ経済主体、個人や企業に有利な見方を提供しかねない点を強調しています。他方で、ケインズ卿に由来するマクロ経済学については期待感が示されている気がします。まあ、私自身がマクロエコノミストですので、勝手な見方かもしれません。
本書では経済学や経済学者=エコノミスト、特に主流派中の主流派である米国の経済学や経済学者=エコノミストについて、英国出身の著者なりの見方を示していますが、いくつかのメッセージを読み取ることが出来ます。まず、主流派の経済学ないしエコノミストが、効用ないし幸福度を考える際に、金銭へ固執してきた点を批判しています。現在では経済学だけでなく、すべての基準が金銭換算されかねないわけで、例えば、何らかの損害賠償は金銭支払いで済ませる場合が少なくないですし、何らかの代替基準の必要はあるかもしれません。
さらに、経済発展や狭い経済学の範囲にはこだわらず医療や健康問題への言及も豊富に収録されています。不平等の問題についても、金銭的な不平等だけでなく、教育や健康まで幅広い問題を考え、特に、サンデル教授が『実力も運のうち』で指摘している大卒者の持つ大きな特権も、サンデル教授と同じように批判しています。
最後の方の8章から11章は経済学者の実態に焦点を当てています。さすがに、ノーベル賞受賞のエコノミストですので、私なんぞとはまったく違う世界を垣間見ることが出来ました。ノーベル賞の授賞式に孫まで含めて一家旅行できるなんて、また、時の大統領にホワイトハウスに招待されるなんて、ごくごく限られたエコノミストだけに与えられる特権なのだと思います。
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