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2026年04月17日07:35

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宮内悠介ほか『旅する小説』(講談社文庫)を読みました

宮内悠介ほか『旅する小説』(講談社文庫)を読みました。
著者は、6人の小説家であり、旅をテーマとする6話の短編が収録されています。
ごく簡単にあらすじを追うと、まず、宮内悠介「国境の子」では、韓国人を父に、日本人を母に持ちながら、父なし子として、生まれた対馬で育てられた主人公が、韓国に帰国した父を訪ねます。藤井太洋「月の高さ」では、劇団の舞台美術スタッフが自動車に乗って、東京から講演先の弘前まで舞台装置を運びます。オリオン座などの星座について、ちょっとだけSFっぽい味付けがされています。
小川哲「ちょっとした奇跡」は、完全なSFであり、宇宙から飛んできた偽月=ファイクムーンが地球の重力圏でとどまって地球の自転が止まり、昼と夜を行き来する2隻の宇宙船で、男女比を調整するために一部のクルーが宇宙船間で移動します。深緑野分「水星号は移動する」では、アテナイ市の高額な宿泊税を逃れる目的で、小説の舞台である宿・水星は移動式の宿泊施設となっています。そこでの人の交流、特に、スペースシャトルを目的としてやって来た旅人の交流を描いています。
森晶麿「グレーテルの帰還」では、武漢で発見された新型ウィルスのニュースから始まり、家族旅行と称して小学生と中学生の兄妹が祖母の家に置き去りにされます。石川宗生「シャカシャカ」では、タイムスリップならぬスペーススリップが生じ、一定面積の地表が突然シャッフルを始め、アチコチの場所にランダムに飛ばされます。飛ばされた先では食料調達すら苦労する場合もあります。
それぞれの短編が旅をテーマにしつつも、旅というよりももっと単純に、移動とか、あるいは、一定の文化圏を離れるという意味での越境による非日常まで含めた幅広い短編が収録されています。単純に、旅行に行くという紀行小説ではありません。SFというか、ファンタジーな作品もいくつか収録されています。
収録作品の中では、小川哲「ちょっとした奇跡」を私は推します。何ともいえない世界観です。膨らませて長編SF小説にすることができそうな気がします。そうなれば、私はもう一度読みたいと思います。

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