遠藤正敬『戸籍の日本史』(インターナショナル新書)を読みました。
著者は、政治学者であって法律のプロではないようです。本書冒頭ではご自分のことを「さすらいの非常勤講師」と称しています。
本書は、法制度も含めて、戸籍の歴史について概観しています。ですから、7世紀の庚午年籍や庚寅年籍から始まりますが、もちろん、中心は明治政府が編製を開始した壬申戸籍以降の近代的な戸籍制度になります。
まず、本書では戸籍の本質について「日本人であることの証明」としています(p.20)。ですから、琉球や北海道のアイヌなどの戸籍作成に始まって、台湾や南樺太、さらには朝鮮半島などの植民地における戸籍についても広範に取り上げています。私はそのあたりはそれほど興味なかったので、自分の興味範囲で、まず、明治政府の壬申戸籍は、血統からひいては職業などを中世封建期に規定していた姓から、実利的な家制度への転換であると指摘しています。ですので、儒教的な倫理よりは、家制度という実利を守るのが主眼とも指摘しています。
続いて、壬申戸籍までの日本の戸籍は夫婦別姓が伝統的であった、とも明らかにしています。ただ、明治期までは武士階級しか姓がなかったので、実例としては、源頼朝と北条政子、足利義政と日野富子を上げています。そして、明治政府の壬申戸籍では、まず、日本人の証明としては、血統主義ではなく、当初は居住地主義に基づき、日本に居住する華族、士族、神官、僧侶、平民などを「臣民一般」として登録した、ということのようです。ですから、皇族は戸籍には登録されておらず、戸籍を持たない、というのは現在まで続いています。血統主義ではありませんから、例えば、ロシアがウクライナ侵略の口実として用いた「ウクライナに居住するロシア系住民の保護」というのは、成り立たないわけです。この点は重要かと思います。
さらに後半では、第9章では戸籍が差別の温床となった事実、第12章では第3国人説の誤り、などの差別や偏見についても、戸籍との関係で取り上げていますが、マンガ「サザエさん」に登場する磯野家の戸籍などの小ネタとともに、そのあたりは読んでみてのお楽しみとしておきます。
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